2.話すスピードをゆっくりにする

 またしても、本質的ではない話である。ある会社に二人の管理職がいると仮定する。一人は上にはこびへつらい、下には強く当たる典型的なデキない中間管理職である。もう一人は上司からも一目置かれ、部下からも信頼の厚いデキる管理職である。それぞれに、どんな話し方をするか、想像してみてほしい。

 おそらく、多くの人がイメージするデキない管理職は、やたら早口で上ずった声で話すようにするだろう。一方で、デキる管理職はスローテンポで、かみしめるように話をするはずだ。これがデキない管理職とデキる管理職の典型的なステレオタイプの管理職像だからである。

 あくまでステレオタイプなので、早口で優秀な管理職はいくらでもいるのだが、残念なことに、ほとんどの人はパッと見や第一印象で判断するので、ステレオタイプにのっとった形で演技しておけば、勝手に「良い管理職」扱いをしてくれるのである(逆に言うと、ダメな方の振る舞いをしていると、どんなに優秀でもダメだと思われ、評価を覆すのに苦労する)。

 そして、話す量を減らす。聞く量を大きく増やす。うなずく。ほほ笑む。基本的にはネガティブな表現はすべて、ポジティブに言い換えるよう心掛ける。例えば、「無理だ」ではなく「挑戦的だ」というように。

 このような、本質的でない見た目にこだわる話はつまらないと思う方も多いだろう。私もそうだった。しかし、一般社員の立場から見ると、管理職がどのような姿を見せてくれているかはとても重要なのである。“良い管理職らしい姿”にしておきさえすればまずは安心してくれるのだから、ここはどうか割り切って演技をしてほしい。

3.意思決定をする場面で、
前提条件と価値判断の基準を問い直す

 上記の二つに比べると、もう少し本質的ではあるが、中身そのものを深く知らずとも、管理職として機能できる質疑応答の方法がある。字面は難しそうだが、何のことはない、質問するだけである。

 具体的に仕事を始めると、まだその内容について深くは知らないにもかかわらず、「課長、これはどのようにすればよいでしょうか?」と部下から意思決定を委ねられることがある。ちょっとしたピンチである。このようなときには、「大事なことを確認させてほしい」と言い、以下の質問をすればよいのである。

ア.【今ある選択肢】この段階で採用できる選択肢は何か。
イ.【過去の実例】過去にあった同様の場面では、どの選択肢が選ばれたのか。そのときはどのような状況であり、なぜその選択基準が選ばれたのか。
ウ.【他部署の実例】同様の意思決定に関して、他部署(よそ)ではどのような選択肢を選ぼうとしているのか。それはどのような選択基準を重視しようとしているのか。
エ.【決定するための基準】現在、重視しなければならない意思決定の基準は何か。
オ.【決定すべき時期】現在、これを決定すべき時期なのか。どのような状況で意思決定をしなければならないか。
カ.【決定後の影響】意思決定をすると、会社全体や他部署に対してどのような影響を及ぼすか。独立して決定してよいものか、他者との事前調整が必要か。
キ.【今の最適解】上記をすべて考慮したうえで、意思決定するとすれば、どの選択肢が最適か。