DiDiはわずか2日間で、注目を集めた新規上場会社から中国国内の取り締まり対象会社になってしまったのだ。米株式市場で急落するDiDiの株価を見て、事態をのみ込めなかった人も多いだけに、人々はDiDiの米国上場と中国政府への対応に大きな関心を寄せた。

政府の締め付けに焦っていたDiDi、短期間の上場作戦

 DiDiは数年前にウーバー中国事業などネット配車会社を相次いで併合し、中国国内のネット配車市場シェアの90%を占めるまで成長した。アクティブユーザーは3億7700万人(グローバル市場では4億9300万人)を擁し、中国のユニコーン企業のトップ3に食い込んだ。

 ただ、ここまでシェアを広げるために、20回以上も資金誘致作戦を仕掛けてきた。資金を大きくつぎ込んできた大株主らは、できるだけ短期間で投資の利益を確実に手に入れたいと考え、DiDiを速やかに上場させ、株価を高くして、つぎ込んだ資金を現金化して撤退する作戦を展開してきた。昨年、アントフィナンシャルサービスグループが上場直前に停止されたショックを受け、焦りも相当覚えたようだ。

 しかし、中国国内のA株市場(原則的に中国の国内投資家のみが売買)へ上場するには、独占禁止法違反の疑いがある同社は上場審査をパスできる可能性が低かった。

 例えば、今年4月に、EC(電子商取引)大手アリババグループは独占禁止法違反で3050億円に上る罰金が科されている。これは中国では同法違反で科された罰金額としては最高額だった。

 さらに、DiDiは2018年から2020年までの3年間だけでも353億元の赤字を出していて、同社の中国国内での上場を困難にした。香港上場も視野に入れてはいたが、資金調達のことを考えると、やはり米国上場の魅力に勝てない。