ますます強化されてくる中国政府の上場規制を見て、これまで上場の兆しがなかったDiDiは米国上場という秘密作戦を急がせた。6月10日に米証券監督管理委員会にIPO申請を行ってから、6月30日に上場を成功させた。わずか20日という上場作戦のスピードは人々を驚かせた。この電撃戦同然の上場はDiDi側の焦りを如実にあらわした。

 だが、米国上場に成功した喜びに浸る間もなく、すぐに中国政府からの容赦ない規制の集中パンチをくらわされた。

中央省庁の人的移動情報の収集・使用が問題に

 DiDiの上場目論見書によると、ソフトバンクグループがDiDiの株式を22.2%、ウーバーが12%持っている。外資企業が株主の1位と2位を占めるこうした資本構成を見た中国市場は、DiDiの米国上場は外国投資家が現金化して撤退する作戦だと受け止め、DiDiに対する支持や同情の姿勢を見せなかった。

 さらに、6年前の2015年に新華社通信から配信されたある記事が、DiDiにさらに致命的な一撃を与えた。

 この記事は、DiDi研究院が同社の配車アプリを利用した顧客のビックデータを駆使して、7月13日から14日にかけて最高気温40℃の時間帯の、北京の中央省庁の人的移動を分析した調査リポートだ。

 リポートは時間軸に基づいて、中央省庁の人的移動を詳細にわたって分析していた。例えば、「公安省は24時間無休」「国土資源省は残業時間がもっとも長い」といった調査結果を出しただけでなく、「国家発展と改革委員会の朝の出勤ピークは6時から、6時~8時までに到着したタクシー利用者は同委員会の1日のタクシー利用者の39.8%を占める」「科技省を出る利用者は16~18時に集中している。定時退社を好む傾向がある」と細部にわたり個人情報が盛り込まれていた。