がん治療は選択の連続
崖っぷちまで追い込まれた

――『ドキュメント がん治療選択』を読んでいると、金田さんが出会った医師や看護師の人となりも、病院内の光景もリアルに伝わってきます。

金田 日々の細かい記録については、本に書くかどうかは関係なく、もともと自分が体験したことはすべて記録することを習慣にしています。食道がんの治療については、最低でも4ヵ月は続く予定だったので、1冊のモレスキンノートを用意して臨みました。

 東大病院に入院した初日から、出会った医師、看護師、同部屋の患者はすべて記録しました。医師や看護師は10段階で勝手に格づけをしたりして(笑)。部屋や病棟フロアの地図、ほかの患者さんの様子も、誰がどんな病気で入院して、いつ退院したかなど、詳細に書いてきました。

――闘病の記録を書籍化して世に出そうと思ったのは、やはりジャーナリストとしての役割意識からでしょうか。

金田 書籍化については、東大病院で治療に感関する説明や情報が少ない状況、セカンドオピニオンや転院が困難を極めたことで、「これは大変なことだな」と気づいたことが大きかったです。そのことを、治療の初期段階で「医者と病院は自分で選ばないとダメだ」とアドバイスしてくれた友人に相談したら、「体験した記録を本にまとめて、世の中の人に伝えるべきでは」と言われて、意を強くしました。

 がん治療を受けていると、選択しなければならない場面が多いんです。私は食道がんでしたが、ほかのがん治療でも基本は同じだと思っています。医師や病院を変えるかどうか、手術をやめた方がいいんじゃないか、もっといいクスリはないのか、とか。

 私もその度に悩んで、考えて、選択してきました。崖っぷちに追い込まれたことも多い。病院側が用意した医療のベルトコンベアから降りるのは、容易なことではありません。そんなことを、いろいろな人に話しているうちに、「これを本にしよう」となりました。

――どんな人にこの本を読んでもらいたいですか。

金田 自分が受けている医療に「あれ? これでいいのか」と疑問を抱くことがある人、有無を言わさぬ医師の態度に疑問を感じたことのある人、ですかね。そもそも医者に頼り切っている人は、そのままでいいと思うんです。それも一つの考え方で、その人の生き方ですから。

 ただ、今はネットを活用すれば簡単に医療情報にアクセスできるので、若い世代は自分の受けている医療に違和感を覚える人もいると思います。そういう人には、ぜひ読んでほしいですね。

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