生命保険・医療保険の
正しい考え方とは?

 では、世の中の人は一体どれぐらいの生命保険に加入しているのだろう。公益財団法人「生命保険文化センター」が2018年に行った「生命保険の加入状況」という調査によると年間に払い込む保険料の平均金額は38.2万円となっている(※1)。つまり月額で3万円あまりを払い込んでいるという計算になる。

ところが、あるネット生命で30歳から10年間、保険金額が1000万円の生命保険に入れば保険料がいくらぐらいになるかをシミュレーションしてみると、保険料は月額1114円となる。

 つまり、本当に必要な期間と金額を考えて保険に加入すれば今よりも月額3万円、年間では36万円を貯蓄や投資に回すことができるのだ。仮に30歳から60歳までその金額を積み立てると元金だけで1080万円、年3%で運用できたとすれば、約1747万円になる(税・手数料は考慮なし)。公的年金の運用を行っているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が過去20年間運用してきた利回りが年率3.61%だから、これは不可能な数字というわけではない。

 また、医療保険についても同様で、病気になったときの治療費は公的医療保険で賄われるものであり、日本は国民皆保険制度なので、民間の医療保険に入っていなくても、誰もが医療保険には加入しているのである。現役世代であれば3割が自己負担であり、その金額が一定額を超えると「高額療養費制度」を使えば、仮に月に治療費が100万円かかってもその負担は9万円程度で済む。

 そもそも民間医療保険の役割は公的医療保険で賄えない費用、例えば病院に行くタクシー代とか入院中の食事代とか、個室に移る場合の差額ベッド料を賄うためのものである。それなら必ずしも保険でなくても貯金しておけばいいだけの話だ。入院したときの差額ベッド料はその貯金から下ろせばいい。それに医療保険で払い込んだ保険料というお金は病気になったときだけしか使えないが、貯金はためておきさえすれば使い道は自由で何にでも使える。

 したがって医療保険に掛けている保険料も前述の生命保険同様、貯蓄や投資に回すことで、さらに増やすことが可能となる。

 サラリーマンで資産を築いた人たちというのは、このように保険について非常に合理的に判断をしている。今回は主に保険について取り上げたが、これは保険だけに限らない。カードローンやリボ払いでの無駄な金利の支払い、会員になっていてもあまり利用していないジム、あるいはほとんど使っていないのに放ったらかしにしているサブスクのサービス等々、無駄をチェックし、合理的思考によって支出を適正化するということは普通のサラリーマンが資産を築いていく上で考えるべき重要なことだといえるだろう。

※1 平成30年度「生命保険に関する全国実態調査 速報版」(生命保険文化センター)
https://www.jili.or.jp/press/2018/pdf/h30_zenkoku.pdf