礼金を高く取れる商品企画はある

 賃貸マンションの商品企画の成否は、礼金月数に表れる。コロナで市況が悪い東京の賃貸市場では、現在礼金はゼロが基本になる。そんな折、平均1.5カ月取っている物件群がある。ここまで取れるのは商品が差別化されているからだ。これほど礼金が高い物件は全体の3%ほどしかない。

 その商品企画は「24時間楽器演奏ができる遮音性の高いマンション」だ。この場合、入居したい人は一定数いるし、その人たちのニーズは、是が非でもそうした物件に住みたいという非常に強いものである。しかし、物件検索サイトではそうした探し方はできないから、探している人も集客する人も困ってしまう。

 それに、遮音性の高い仕様にするには、建築単価がかなり跳ね上がる。高いからこそ、それなりの賃料が必要になるが、集客に苦戦するようでは相場並みの家賃しか取れず、入居する人も遮音性に価値を置かない人になりがちになってしまう。そこを解決しないと商品企画は成功とはいえないのだ。

 特徴ある物件の場合、ニーズが合うターゲットを見つけられないと企画倒れになる。その物件に住みたい潜在顧客を集め続けることが唯一、需給ギャップを埋める方法になる。その際に物件検索サイトに頼ることができないのが、厳しいところである。

 しかし、それなら自分たちでやったことがある。当社で運営する「住まいサーフィン」というサイトには27万人の会員がいる。分譲マンションの物件毎の資産性(値下がりのしにくさ)が気になる方が年間約2万人入会する。どっちのマンションの資産性が高いかなどをサイト上で確認できるのが最大の売りだ。

 先ほどの「遮音性の高いマンション」は潜在顧客を2000人以上集めており、空室情報を一斉配信している。早ければ、30分で入居者が決まることもある。このように、潜在顧客をため込んでいると、安定的に高稼働率を維持することができる。これは、この商品企画が成立したことを意味する。つまり、今後も供給したら、顧客を付けることができるということだ。