そうした背景があることから、日産のDNAを継承する新型Zは日産復活の象徴としての意義が大きい。

 日本でも、本来なら今秋の東京モーターショーで日産車の“目玉”としてこの新型Zを強くアピールする予定だったが、コロナ禍が続く中で東京モーターショーは中止になってしまった。

 ただ、こうしたスポーツカー市場は限定されており、Zの業績寄与効果もそこまで大きいものではないだろう。ホンダが「NSX」の生産を22年末で終了し、今後はEVスポーツカーの開発に集中する動きがあるほか、日産も「スカイライン」の生産継続の有無が取り沙汰されている。世界的なカーボンニュートラルの加速トレンドと総合的な収益性の観点から、車種展開の方向性も限られてきている。

 その意味では、量販EVとしての「アリア」も新生日産の意欲を示す新型車として、その位置づけが求められることになるだろう。

 いずれにしても日産は内田体制によってゴーン事件から3年が経過しようとする中で、ルノー・日産・三菱自の国際連合のしがらみ(枠組み)を身にまといながら変革による復活の道のステップを急いで踏んでいかねばならない。この新型Zが日産復活の象徴となるか、さらに日産の動向を注視したい。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)