ゾーン状態に入るために必要なこととは?

 ヨーダ「いわゆるフローとマインドフルネスの関連性を指摘する者たちもいる。心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱したフローについては知っとるよな。リラックスしたまま対象に浸りきって、すさまじい集中力が発揮される状態のことじゃ。

 一流のアスリートが世界的な記録を出すときには、極度に集中力が高まった状態になるという。いわゆるZONEというやつじゃな。仕事の場面でも、リラックスと集中とが共存する、この種の意識状態は報告されておる」

 しかし、リラックスした覚醒状態が、そんなに簡単に手に入るものだろうか。何しろ、一流のアスリートですら、いつでもZONEに入れるわけではないのだ。そんなナツの疑念を払拭するかのように、ヨーダは口を開いた。

「こないだのマインドフルネス呼吸法に、ラベリングという方法を組み合わせてみることにしよう。これはただ心をリラックスさせるだけでなく、集中力を高めるうえでも効果的じゃ。といっても簡単で、呼吸に合わせて1から10まで数えるだけ。10までいったらまた1に戻る。いろんなことが気になって仕事がなかなか進まんときは、このラベリングがいちばんじゃ。これを繰り返していれば、リラックスした覚醒状態に入りやすくなる」

「いまここ」を意識するムーブメント瞑想

「最後にもう1つ」ヨーダがナツを真正面から見つめて言った。

歩行瞑想についても解説しておこう。これも『自動操縦』解除のための典型的なメソッドじゃ。歩いているときに、自分の手や脚の動き、地面と接触する感覚に注意を向けるだけでいい。歩くスピードは自由じゃが、最初はゆっくりにするといいぞ。

 歩くという一見単純な動きも、脚の筋肉や関節の複雑な運動で起きておる。それら1つずつを細かく意識してみるんじゃ。できれば、ここでもラベリングと組み合わせるといい。『右』『左』とか『上げる』『下げる』というふうに、自分の行動にラベルを貼ってみると、よりいまここに集中できるぞ」

 ヨーダが言うには、自分の身体の動きに注意を向けて、いまここを意識する方法をムーブメント瞑想と呼ぶらしい。歩行瞑想はその典型だ。マインドフルネスを取り入れたグーグルの社員研修プログラムSIY(Search Inside Yourself)でも、これらが実践されているという。

 ヨーダ「ムーブメント瞑想は日常のあらゆる動きに応用できる。服を着るとき、歯を磨くとき、車を運転するとき・・・・・・日常生活の中の『自動操縦』を意識しさえすればいいんじゃ。どの動きを選ぶかは自由じゃが、できれば毎日決まってやることがいい。

 たとえば『ラベリングをしながら朝の歯磨きをする』というのでもいいじゃろうな。『外出時に玄関を開けるところからスタート』など、きっかけを決めておくと忘れにくいし、習慣づけがしやすいぞ」

(本稿は、『世界のエリートがやっている 最高の休息法』から一部を抜粋し、編集したものです)

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