みずほ銀行が再びシステムトラブルに見舞われている。2021年2月に多数のATMが使えなくなるという大規模障害が発生し、対策を進めていた最中のことだった。ここまで来るとシステムの設計そのものを疑問視せざるを得ない状況であり、メガバンクとしての存在意義すら問われる事態といってよいだろう。この事態を招くに至った、みずほの「IT戦略不在の20年史」を分析し、今年だけで6度目となるシステム障害が必然といえる理由を解説する。(経済評論家 加谷珪一)
みずほ銀行がまたもシステム障害
今年6度目で致命的な多さ
みずほ銀行とみずほ信託銀行では2021年8月20日朝から、システム障害によって店頭での入出金や振り込みができなくなった(障害の発生そのものは前日の午後9時)。ATM(現金自動預け払い機)やインターネットバンキングは稼働しており、同日昼には「システムが復旧した」と発表している。
ところが23日になって今度はATMに障害が発生、約1時間半にわたって約130台のATMが使用不能になった。このトラブルは、20日の障害に関してみずほが行員向け説明会を開く準備中に発生している。会社側が説明会の準備を行っていたということは、障害について事態を収拾したと認識していたことになるが、現実は違ったようだ。
システム障害を起こすのは今年に入って5回目であり、直近のATM障害を別扱いにすると6回目と、資金決済を取り扱う銀行としては致命的な多さだ。さらに、同行は過去にも大規模なシステム障害を起こしている。
みずほ銀行は第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が統合して02年4月に発足した銀行である。ところが統合後の営業開始初日にいきなりシステム障害を起こし、250万件の取引が影響を受けた。11年3月には、東日本大震災の3日後に再び大規模障害が発生。振り込みの未処理が100万件以上も発生し、多数のATMが利用できなくなった。
同行はシステムの刷新を決断し、8年の期間と4000億円の費用を投じて19年に新システムを稼働させた。新システムをお披露目したのもつかの間、今年2月に発生したATM障害以降、連続してトラブルに見舞われている。
2月に発生した障害については、親会社であるみずほフィナンシャルグループ(FG)が「システム障害特別調査委員会」を設置し、本格的な調査を行った。提出された報告書では、各トラブルに技術面における共通要因はないとしながらも、システム障害の原因として、組織の弱さ、システム統制力の弱さ、顧客目線の欠如があり、根底には企業風土があると結論付けている。
だが、対策を進めている最中に再び障害が発生したことや、バックアップが機能しなかった現実を考えると、技術的な共通要因が存在しないとは考えにくい。根底に組織の問題があるのは言うまでもないが、組織の問題がシステムの設計や運用に深刻な影響を及ぼしたと考えるのが自然であり、この問題は極めて深刻といわざるを得ない。