「コロナ禍でOB訪問をリモート開催にしたことが、追い風になった側面もある」と、谷出氏は語る。普段、大学の近くに住んでいる学生が、リアルのOB・OG訪問で都心に出てくるためには、電車で1時間近くもの時間を要する。また交通費もそれなりに必要で、学生にとって非常に負担となる。
その点、初対面の人ともリモートで面会するのが当たり前となった今では、時間も交通費もかからなくなり、参加の物理的・心理的ハードルがかなり下がった。実際、今回参加した学生の満足度は95.4%。過去の開催でも常に94%以上の満足度と、高い値になっている。
「真の就活力」向上のために
同窓会と大学が導き出した結論
茗渓会が「OB・OGキャリアカフェ」を始めたきっかけは、学生や大学へのさらなる貢献の取り組みを考えたからだ。これまで大学就職課がやっていたことを、茗渓会ネットワークを使い、拡大発展させたのが「OB・OGキャリアカフェ」となる。
同窓会側にとっても、この試みは会員の活性化に繋がるメリットがある。1年に4回発行される会報誌だけでは、会員を束ねる求心力に乏しい。時間がたつにつれ、同窓会と距離ができる人が増えてくる。その意味において「OB・OGキャリアカフェ」は、会員が「自分事」として同窓会に参加するきっかけづくりになる。
最近では「OB・OGキャリアカフェのような取り組みに興味を持ち、他の大学や企業の採用担当者から相談を受ける機会も増えてきた」と谷出氏は語る。世間では、OB・OG訪問のためのネットワークサービスを提供する人材サービス会社なども出始めたが、大学関係者が主催するOB・OG訪問の安心感や使い勝手の良さは、学生にとって大きいだろう。
「就活力」は、決まった時期に決まった方法論で情報収集や人脈づくりをするだけでは向上しない。大学に入学してからの人との出会いや学生生活での様々な試行錯誤が、すべて就活の準備になり得るのだ。学生たちのそうした基礎体力づくりをサポートするうえで、「OB・OGキャリアカフェ」は大きな可能性を秘めていそうだ。年に2回開催されているキャリアカフェ、次回は12月に予定されている。
さらに同窓会は、キャリアコンサルタント(国家資格)を持つ卒業生が学生にキャリア相談を行う『キャリア相談員』という仕組みも計画中だ。
(取材・文/ダイヤモンド社 ヴァーティカルメディア編集部 副編集長 小尾拓也)