「母数」をどのように稼ぐか
高橋 『超★営業思考』の中でまず共感したポイントは、「営業は確率論であり、母数を確保することが絶対条件」とおっしゃっている部分ですね。
金沢 ありがとうございます。保険営業で言うと、売れない営業マンはみんな、「保険に入ってくれそうな人」としか商談をしないんですよね。なるべく断られたくないから。まず「保険の話を聞いてくれそうな人」ばかりを探してアポをとり、アポがとれた人とだけ商談する。
だけど、それをやってしまうと、断られて傷つく回数はたしかに減るんですが、同時に契約をお預かりできる件数も減る。だから、いつまでも「売れない営業マン」のままでいるんです。
高橋 なるほど。自ら「お客さま」の範囲を狭めているわけですから、母数が増えず、契約の件数も伸びないのは必然ですね。
金沢 そうなんですよ。契約の件数を増やしたいのなら、まず母数を増やさなければならない。保険は、極端にいえば、生きている人すべてがお客さまになる可能性のある商品です。つまり、自分が接する人すべてが「見込み客」なわけですね。この感覚を持てるかどうかが、「売れる営業マン」と「売れない営業マン」の最初の分かれ道です。
高橋 きっと「売れない営業マンが見ている世界」と「金沢さんが見ている世界」はまったく違うのでしょうね。たとえば目の前に100人の「保険に興味のない人」がいるとして、売れない営業マンは「見込み客がひとりもいない」と見るのでしょうけれど、金沢さんには「見込み客が100人もいる」と見える。この時点で母数には雲泥の差が出ます。
金沢 そうそう。保険営業のようなto C営業は、とにかく数を打てば、ひとり、ふたりからは意外な好反応を得られる世界です。自分から見込み客の範囲を狭めないことが大切だということです。
元プルデンシャル生命保険ライフプランナー AthReebo(アスリーボ)株式会社 代表取締役
1979年大阪府出身。京都大学ではアメリカンフットボール部で活躍。大学卒業後、TBS入社。テレビ局の看板で「自分がエラくなった」と勘違いしている自分自身に疑問を感じて、2012年に退職。完全歩合制の世界で自分を試すべく、プルデンシャル生命保険に転職した。当初は、思うように成績を上げられず苦戦を強いられるなか、一冊の本との出会いから、「売ろうとするから、売れない」ことに気づき、営業スタイルを一変させる。
そして、1年目にして個人保険部門で日本一。また3年目には、卓越した生命保険・金融プロフェッショナル組織MDRT(Million Dollar Round Table)の6倍基準である「Top of the Table(TOT)」に到達。最終的には、自ら営業をすることなく「あなたから買いたい」と言われる営業スタイルを確立し、TOT基準の4倍の成績をあげ、個人の営業マンとして伝説的な業績をあげた。
2020年10月、プルデンシャル生命保険を退職。人生トータルでアスリートの生涯価値を最大化し、新たな価値と収益を創出するAthReebo(アスリーボ)株式会社を設立した。著書に『超★営業思考』(ダイヤモンド社)。
高橋 私がやっているto B営業にも同じことがいえるんですよ。こちらが想定もしていなかったお客さまから引き合いがあることも多くあります。「どのお客さまが取引してくださるか」なんて、こちらの頭の中だけではわからないんですよね。
だから私も、起業当初はとにかく営業電話をかけまくっていました。ほとんどは「ガチャ切り」で、「間に合ってます」なんて言ってもらえればいいほうだったんですけど、それでも、数を打たないと始まりませんからね。
金沢 さすがのバイタリティですね(笑)。ぼくの場合は、基本は紹介営業でした。お客さまから契約を預かり、信頼関係を築いて、そのお客さまにまた誰かを紹介していただくという「無限連鎖」を続けることで、母数を築き上げていきました。
高橋 それって難易度が高いですよね。よく途切れさせずに紹介をつなげられましたね。
金沢 ぼくなりに大切にしてたのは、「保険を契約してくれそうな人を紹介してくれ」とは言わないということですね。ただ「金沢に大切な知人・友人を紹介したい」と思ってもらえるように努力したわけです。その人が今、保険を必要としていなくても、人間関係さえ握れていれば、人のつながりは広がっていく。その母数があるから、一定の確率で案件として上がってくる。そのような感覚で母数を確保していましたね。
高橋 それはもはや、「保険」というより「金沢さん自身」が商品になっている状態ですね。金沢さんが「私と会ってもらうと、こんなにいいことがありますよ」と相手にアピールできた点は何だったんですか?
金沢 ひとことでいえば、ぼく自身が紹介できる「仲間」の多さですね。子どものころからの「ガキ大将気質」が幸いしてか(笑)、仕事・プライベートを問わずいろいろな仲間がいます。「ゴルフ仲間」もいれば「食事仲間」もいる。その中には必ず、新たに知り合う人と引き合わせることによってウィン・ウィンになるような人がいます。
昨日も、3人の社長さんを引き合わせて、ゴルフコースを回ったんですが、みなさんの事業領域に親和性があったので、ビジネスの話も盛り上がって、すぐに意気投合されていました。そのような場が提供できるのが、ぼくの強みですね。