「営業プロフェッショナル」による対談が実現した。『無敗営業』の著者・高橋浩一氏と、『超★営業思考』の著者・金沢景敏氏のおふたりだ。高橋氏は、上場企業を中心に50業種3万人以上の営業強化を支援するTORiX株式会社の代表であり、8年間自らプレゼンしたコンペの勝率は100%を誇る、まさに「無敗営業」を体現する人物。一方の金沢氏は、プルデンシャル生命保険入社1年目にして国内営業社員約3200人のトップに立ち、3年目には「Top of the Table(TOT)」に到達した「伝説の営業マン」である。おふたりはどのようにお客さまとの関係性を深め、実績を挙げてきたのか。金沢氏には「to C営業」、高橋氏には「to B営業」の見地に立って語り合っていただいた。(構成/前田浩弥)

「仕事用の仮面」を脱げる人だけが成功できる写真はイメージです Photo: Adobe Stock

「引っ込み思案の少年」と「ガキ大将」が違う道を歩んでつかんだ「営業の真理」

金沢景敏氏(以下、金沢) 『無敗営業』を拝読しましたが、めちゃくちゃ面白かったです。ぼくがいつも無意識に、感覚的にやっていたことがすべてきれいに言語化されている印象を受けました。ここまで丁寧に書籍に落とし込むと、読んだ人の再現性も高まるよなぁと感じました。

高橋浩一氏(以下、高橋) ありがとうございます。金沢さんのような、営業のトップ中のトップの人に「自分が無意識に、感覚的にやっていたことと同じ」と言っていただけるのは嬉しいことです。

金沢 興味深かったのは冒頭、高橋さんがご自身の子ども時代について語っている部分です。高橋さん、極度の人見知りだったんですね?

高橋 はい。「人見知り」どころか「対人恐怖症」レベルでした。クラスメイトから話しかけられただけで赤面して、しどろもどろになって掌や脇にたっぷり汗をかいてしまうような……。そのせいでよくからかわれていました。

「仕事用の仮面」を脱げる人だけが成功できる高橋浩一(たかはし・こういち
TORiX株式会社 代表取締役
東京大学経済学部卒業。外資系戦略コンサルティング会社を経て25歳で起業、企業研修のアルー株式会社に創業参画(取締役副社長)。事業と組織を統括する立場として、創業から6年で70名までの成長を牽引。同社の上場に向けた事業基盤と組織体制を作る。2011年にTORiX株式会社を設立し、代表取締役に就任。これまで3万人以上の営業強化支援に携わる。コンペ8年間無敗の経験を基に、2019年『無敗営業「3つの質問」と「4つの力」』、2020年に続編となる『無敗営業 チーム戦略』(ともに日経BP)を出版、シリーズ累計6万部突破。2021年『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)、『気持ちよく人を動かす〜共感とロジックで合意を生み出すコミュニケーションの技術〜』(クロスメディア・パブリッシング)を出版。年間200回以上の講演や研修に登壇する傍ら、「無敗営業オンラインサロン」を主宰し、運営している。

金沢 その高橋さんが今や、営業コンサルティングを行う会社を起業して軌道に乗せ、コンペ無敗を8年間も続けているのですから、人生はわからないものですね(笑)。

高橋 本当ですね(笑)。実は、私にとっての「営業」は最初、「対人コミュニケーションの練習の場」という認識だったんです。

 初めてのアルバイトは、店舗に英会話学校のポスターを貼らせてもらう飛び込み営業でした。応募前に仕事の内容を見て、「極めて安全に対人コミュニケーションを練習できる場だな」と思ったんです。

 学校で、友だちの前でみっともない思いをしたら立ち直れませんが、飛び込み営業ならば、どれだけみっともない思いをしても、けんもほろろに断られても、次の建物にいけばいいわけですからね。

金沢 なるほど、確かに! 実際にやってみて、いかがでしたか?

高橋 「これはすごい世界だ!」と思いました。いざアルバイトを始めてみたら、初対面の人とコミュニケーションをとる、ものすごい量の練習ができるわけですからね。人と話すことにもだんだん動じなくなり、「苦手なことができるようになる快感」を知って、やみつきになって現在に至る感じですね(笑)

金沢 「人と話すのが苦手だから、アルバイトで練習しよう」というのがすごい。常人の意思決定じゃないですよね(笑)。普通の人だったら「人と話すのが苦手だから、人と話さずにすむようなアルバイトを探そう」と考えますもん。

高橋 私の中にちょっとした「マゾ気質」があるのかもしれませんね(笑)。ところで、金沢さんの子ども時代はどんな感じだったんですか?

金沢 ぼくはもう、見ての通りというか、ご想像の通りですよ。周りの友だちを巻き込んで「あれやろうぜ」「これやろうぜ」なんて言いながらみんなでワーワー楽しむタイプ。小学生からの友だちにも「お前はほんと変わらないな」なんて言われます(笑)。

高橋 いわば「ガキ大将」タイプですね。子どものころはあこがれていました。ただ、子どものころは、金沢さんと私とは、まったく違う人生を歩んでいたはずなのに、金沢さんの『超★営業思考』を拝読すると、やっぱり私にも共感する部分が多くあるんですよ。

金沢 それは嬉しいですね。

高橋 もしかしたら私たちは、「同じもの」を「違う方向」から書いているのかもしれません。

金沢 伝えようとするゴールは同じなのに、アプローチが違う。面白いものですね。