災害時に身を守るためにも
正しい情報を入手しよう

 東日本大震災では、当初、自己負担金の免除期間は2011年5月末を一応のめどとしていた。だが、被害が広範囲に及んだ上に、原発事故による複合災害もあり、被災者の生活再建はなかなか進まなかった。そのため、自己負担額の免除期間も延長が繰り返され、国による一律の支援は2012年2月末まで続いた。

 2012年3月以降は、加入している健康保険によって異なる対応が取られたが、津波による甚大な被害を受けた岩手県では、国民健康保険と後期高齢者医療制度の加入者に対して、2021年3月末まで無料措置が続いた(住民税非課税世帯は2021年12月末まで行われる予定)。また、東京電力福島第一原発の事故による被災者は、別途、医療費無料措置が継続されている。

 被災者の医療費無料期間は、状況に応じて柔軟な対応が取られており、病院や診療所での一部負担金のほか、保険薬局、訪問看護などに支払う自己負担分も免除される。また、介護保険の利用料についても免除対象だ。

 ただし、免除対象になるのは健康保険が適用されている治療費や薬代などだ。個人の希望で使った個室の料金、健康保険の利かない先進医療の技術料などは免除の対象にはならない。また、入院時の食事代、介護施設等の居住費なども無料にはならない。

 医療機関に支払うお金のすべてが無料になるわけではないが、必要な医療を受けるための費用は無料になる。被災して医療費無料の要件に当てはまるのに、医療費の全額や一部負担金を支払ってしまった人は、後日、加入している健康保険組合に申請すれば、還付を受けることができる。支払ったことを証明する医療費の領収書などを添付して、忘れずに還付請求するようにしよう。

 1995年の阪神・淡路大震災以降、日本列島は数年おきに大地震や津波に見舞われている。地球温暖化の影響なのか、毎年のように大雨や台風による被害も出ている。

 だが、その経験によって、日本は災害に対処する力もつけてきている。EMISも、DMATも、健康保険の特例措置も、阪神・淡路大震災の時には存在していなかったもので、災害医療への対応は以前よりも格段に進歩している。

 災害時に命をつなぐために、最も重要なことは正しい情報を入手することだ。医療費が無料になることを知らなければ、体調の悪さを感じながらも医療を受けることを諦めてしまうかもしれない。

 災害時は、医療費の特例措置のほかにも、住まいに一定の被害を受けた人を対象とした被災者生活再建支援制度からの給付金、各種税金の減免なども受けられる。

 万一のときの暮らしを守るために、今年の防災週間は、家具の固定などの住まいの地震対策、非常持ち出し袋の再点検とともに、災害時にもらえるお金の情報についても確認しておきたい。