まずは<1>だが、日本の証券会社や銀行で買えるヘッジファンドは、日本国内の投資信託の規制の範囲内で運用を行う、いわば“ヘッジファンド風”投資信託だ。これには、国内の運用会社が自力で運用する「和製ヘッジファンド」と、海外ヘッジファンドを輸入して、投資信託として組成する「輸入ヘッジファンド」の2種類がある。

「和製」には先のヘッジファンドの戦略説明で述べたような手法が使われることはまれであり、高リターンなど望むべくもない。かたや「輸入」の場合は、オリジナルの海外ヘッジファンドを「マザーファンド」として、それに投資する「フィーダーファンド」と呼ばれる投資信託が設けられる。投資家の立場から見ると、フィーダーファンドに入れた資金が間接的にマザーファンドに入るという流れになるため、マザーファンドが高リターンを出しても、流通マージンで食い潰してしまう。

日本で営業中のプライベートバンクへの
投資で注意すべき点とは?

 たとえば、マザーファンドが年10%の利益を出したとしても、まず海外の証券会社が2%、中間にあるフィーダーファンドが運用コストとして年1.5%を徴収する。さらに 日本の証券会社が3%の販売手数料を取ると、投資家には3.5%ほどしか残らない。これはあくまで手数料だけの話で、投資家が好きなときに解約できるように運用資産の現金割合を増やしたり、運用資産の信用取引割合に制限がかけられたりすれば、フィーダーファンドの利回りはさらに低下することになる。

 海外ヘッジファンドのダイナミズムを大きく毀損してしまったような商品を銀行・証券会社はこぞって設定・販売している。こんなことが横行している理由はただ1つ、個人投資家に金融リテラシーが不足しているからである。

 次はプライベートバンクを通じての購入だ。日本で営業中のプライベートバンクでは、クレディ・スイス証券(口座開設は5億円以上から)や、UBSウェルス・マネジメント(口座開設は2億円以上から)などが人気だ。だが、銀行として日本の金融庁の管轄下にある以上、販売している投資信託は、ほかの銀行・証券会社が販売しているものと同じである。

 ただし、プライベートバンクに資金を託して運用を任せる「投資一任勘定」を通じて、海外のヘッジファンドに直接投資できる可能性もあるが、これには2つの懸念がある。

 まず1つは、投資一任勘定の最低投資額は数億円以上とハードルが高いこと。2つ目は、投資先のヘッジファンドの選択肢が限られており、しかもプライートバンクの系列会社のファンドを紹介されることが多いことだ。あくまで可能性の問題だが、成績の芳しくないヘッジファンドを投資一任勘定のポートフォリオに組み入れられたり、単なる手数料稼ぎのための提案をされたりするなどの恐れがあり、投資家は利益相反(プライベートバンクの利益が顧客の利益と相反していないか)に十分注意する必要がある。