ただし、ここで確認しておきたいのは、「ハイリータンならハイリスクだろう」と思われがちなヘッジファンドが実は、株式や債券といった他のアセットクラス(投資対象となる資産)と比較した場合、2000年から2020年末までの20年余りにおいて最も低リスク、高リターンを達成したということである。この事実は、本著の発売に際して立ち上げた『富裕層のためのヘッジファンド投資入門 特設サイト』で示した、過去20年間の実績・データをまずはしっかりとご覧いただきたい。

 もう1つの「ビジネスリスク」は、ファンドの組成から決済まで、ファンドの仕組み(スキーム)全般に関するリスクである。簡略に説明すると、ファンドの運用のリスク管理や、ファンドの資産そのものを管理する仕組みが不十分であったり、最初から詐欺行為を企んでいたもので、投資家の資金が毀損・消失してしまうリスクである。ファンドでは様々な役割分担が行われており、具体例を挙げれば、投資家の資金を保全・保管する「カストディアン」(資産管理会社・信託銀行)、取引の記録や記帳を行ってファンドのパフォーマンスの虚偽報告などを防ぐ「アドミニストレーター」(事務管理会社)、ファンドの会計監査を行う「監査法人」などが存在する。

 ところが、米国最大の詐欺事件と言われる、650億ドルを詐取したマドフ事件や、日本のAIJ(投資顧問)事件など、ファンドを舞台にした詐欺事件は後を絶たない。こうした事件は、アドミニストレーターなどが不在だったり、詐欺グループとグルだったりと、ファンドのスキームの穴を突いたものであった。ヘッジファンドの目論見書には、スキームの説明や、どの企業がどの役割を担っているかが明記されているので、厳重なチェックが不可欠だ。
 
 なお最近、ネットで検索すると頻繁に目に付く、高利回りを謳う“自称ヘッジファンド”のなかには、出資なのに「金銭消費貸借契約」で顧客から資金を集めたり、わざわざ議決権を制限した合同会社形式で出資を募ったりするなど、怪しげな募集方式のものが少なくない。無論、そうした“自称ヘッジファンド”がまともな資産管理会社や監査法人のチェックを受けていないのは言うまでもない。ネット上を跋扈するこうした詐欺的なファンドに引っかからないよう、くれぐれもご注意頂きたい。投資家をこうした詐欺業者から守るゲートキーパー(門番)もまた、われわれ投資助言会社の役割である。先のAIJ事件で、詐欺業者が標的にしたのは、投資助言会社を雇っていない無防備な年金基金だった。

海外の一流ヘッジファンドは
果たしてどこで買えばいいのか

 では、最後に海外の一流ファンドはどこで、どう買うのが一番お得なのかを説明しよう。 ただし、話がまどろっこしくなって恐縮だが、我田引水を避けるため、中立的な立場でファンドの購入法を基礎レベルから解説する。

 日本の個人投資家がヘッジファンドを買う方法には、次の3つがある。

<1>   国内の銀行や証券会社を通じて、国内投資信託として組成された商品を買う
<2>   プライベートバンクの投資一任サービスを通じて、海外ヘッジファンドを買う
<3>    中立的な専門家である投資助言会社を利用して、海外ヘッジファンドを直接買う