VUCA+Digital+withコロナ時代に求められる
「従業員体験価値: EX」
クリスティーン・デリー研究員
(MITスローン・スクール・オブ・マネジメント)
DXの重要な要素として、従業員体験価値(EX: Employee Experience)が注目されています。
なぜなら、従業員が持つ潜在能力を最大限に、かつ持続的に引き出すには、従業員が働く環境を整備し、彼ら・彼女らに自身の業務に関する裁量を最大限に委譲することが近道だ、という事実が様々な研究・実践分野で実証されてきたからです。
日本企業では戦後、半世紀以上に渡り経営者と従業員の関係性は、「従業員は家族」「(多くの場合)終身雇用制度の中で最後まで面倒を見る」「同期の切磋琢磨から学び、長い年月をかけて会社に貢献をする」「就職というよりは、名実ともに就社」というモデルで語られてきました。
最近では「メンバーシップ型」という表現で称されていると聞いています。
そのモデルは果たして今後も有効でしょうか? 持続可能しょうか? 従業員側はどうでしょうか? 伝統的な就労観や、終身雇用制度の捉え方はどうでしょうか?
日本の雇用モデルが一気に欧米型に振れることはないでしょう。しかし、方向性として経営と従業員の関係性はより欧米型に近づくと考えるならば、「EXを科学する」経営という着眼点は、今後ますます重要になるのではないでしょうか。
欧米では、これからのVUCA+Digital+withコロナ時代に、従来のジョブ型だけで本当にサバイバルできるのか? という根本的な問いが提起されはじめています。
もしかすると、日本企業の「メンバーシップ型」でも、欧米企業の「ジョブ型」でもない、第三の人事システムを、未来に向けて発明する必要があるかもしれません。
そのためには、日本企業は、現時点で自分たちとは対極にある人事システムについて、つぶさにスタディし、その利点と限界についての自社なりの洞察を整理する必要があるのではないでしょうか?
DXは、とかくCX(顧客体験価値)だけが強調されます。どうかEX(従業員体験価値)の視点を忘れないでほしいと思います。