絶好のチャンスに「働き人改革」を
竹内弘高教授(ハーバード・ビジネス・スクール)

 日本は、これまで外圧・外敵をうまく使ってきました。第二次世界大戦もコロナ禍もそうですが、外的な要因が変わる時に、すべてパージ(一掃)されます。大戦により若手技術者が残ったことで、ソニーができた。今回のコロナ禍の状況を活かさない手はないでしょう。

 1960年代の米国家安全保障局が公開した論文(「UFOに乗っている宇宙人に遭遇したら何を伝えるか」)では、「日本に学べ」と結論付けられていました。つまり、日本は「技術的には劣っているがすぐにキャッチアップした」ということです。

 自分が劣っていることを真摯に認めるということ(AI: アドバンテージ・インフェリア)。劣っているという自覚が革新を生むのです。

 HBSのオンライン教育もいい例です。スタンフォードのそれに、遅れること20年。「やばいぞ」というニティン・ノーリアHBS学長の自覚で作ったのが、今のオンライン教育システムです。90人のケースディスカッションが可能なシステムを作りました。

 DXについてもトップが自覚すれば、いままでの縦割りが全部崩されて抜本的なことができるでしょう。それが戦後の日本や、3・11後の東北でもありました。

 コロナ禍は、AIを真摯に認めるチャンス。だれがその担い手になるのかという点については、「働き方改革」ではなく「働き人改革」をまず行うことです。DXの場合は若者を登用することです。大学生・高校生は圧倒的にデジタルの感覚を分かっています。

 もう一つの「働き人改革」は女性。マジョリティになった時の女性は圧倒的なパワーになります。野村マネジメント・スクールが提供する「女性リーダーのための経営戦略講座」において、我々も目の当たりにしています。

 マイノリティがマジョリティとなる場としてチームを作り、「これを任せる」という部署を作ってしまった方が早いかもしれません。

 コロナ禍の状況は絶好のチャンスなのに、まだまだ変革していこうとするスピード感が足りないと感じています。