DX推進は経営チーム改革から、「VUCA+Digital+withコロナ時代」の経営Photo:PIXTA

「DX元年」と叫ばれ、長期化するコロナ禍で、ほとんどの企業が何らかのDXの構想策定あるいは計画推進を進めている。だが、そもそもの「DX人材」の人材要件すら明確でない企業がほとんどだ。世界を代表するビジネススクールの教授の皆さんに、今後の舵取りへの示唆を伺った書籍『有事の意思決定 一枚岩の経営チームがリードする』。連載第3回は、経営チーム自身に求められるデジタル度や従業員との関係性という視点から、企業変革へとつなげる企業経営者の行動指針を提示する。

「デジタル・サビー」が求められる経営
ピーター・ウェイル教授
(MITスローン・スクール・オブ・マネジメント)

 我々の焦点は、伝統的な大企業が如何にDXで成功するか? という領域にあります。したがって、多くの伝統的な日本企業には「自分ごと」として捉えてもらいたいと思います。

 我々の研究結果では、「取締役のDS(デジタル・サビー)、いわゆる『デジタルに関して精通している』度合いが高い企業ほど高業績をあげている」「DS度の高い取締役が3人以上いるか否かが業績の優劣を分ける」「この傾向はTMT(トップ・マネジメント・チーム;執行責任を持つオフィサーにより編成されるチーム)にも同様に当てはまる」といった大変興味深い結論を導き出しています。

 そこで、日本の大企業TMTへのアドバイスは、以下の3段階方式となります。

 第一に、アンテナが低くてはダメです。世界中のDXの先進事例、理論、フレームワーク、有識者に関するアンテナを高くしてください。カンファレンスに行ってください。

 第二に、自社のTMTのDS度の現状値を把握してください。それなくして、DXを推進するために必要な組織能力は高まりません。

 日本の場合は取締役よりも、まずはTMTのDS度の現状把握からです。そのためにはTMTの構成メンバー間の「率直な話し合い」が重要となります。いつも使っている会議室やZoomの画面越しではなく、たまには感染防止対策を万全にし、非日常的な空間に集まり、裃を脱いだ、正直な語らいの場が必要です。

 経営陣としてターゲットとすべき高DS人材50%に対して、自社の現状を深く理解すべきです。誰が高DS度で、誰がそうでないのかを直視するということです。

 最後に、現状のDS度を高めるための計画を構想し、TMT構成メンバー自身が透明性高く内外にコミットすべきです。リーダー層が率先垂範して自らのDS度を高める行動にコミットすれば、それは自然に組織内に伝播します。

 それを組織開発や風土改革にまで持っていく時にはHR部門の出番となります。競合の動きより常に速く・先回りをして、しかし必要十分な時間とエネルギーをじっくりと投入することが肝要です。