後継者指名に関与し始めた取締役会
デビッド・ムスト教授
(ペンシルベニア大学ウォートン・スクール)

 米国でもサクセッションプラン(後継者の計画)について開示がなされるようになったのは、ごく最近のことです。

 初期の頃はCEOの後継者に留まっていました。現CEOに不慮の事故などが起きたときに、企業活動を止めることなく後継のCEOを選出できるようにするためのものでした。

 それが、有事対応だけではなく、その検討を後継者計画の立案、人材候補の選定、育成プログラム、評価システムといった内容にまで広げる企業が出てきました。

 それらの企業では、サクセッションプランを進める主体は取締役会となる企業が多くを占めますが、取締役会の委員会が主体であるケースも多くなっています。

 企業によってはCスイートだけでなく、部長クラスのサクセッションプランまでに対象を広げる動きもあるようです。将来の企業幹部の人材プールをいかに作り込んでいくか、という視点からサクセッションプランの整備が進んでいるということです。

 人材プールの整備という面では、人材の評価基準は非常に重要な要素になります。

 現在の人材の実力を評価する視点だけでなく、将来のポテンシャルを評価する視点が必要になります。企業の長期的な成長戦略が明確でなければ、将来のポテンシャルもなかなか評価することはできないでしょう。

 しかし、VUCA時代と言われる今日、確たる戦略も立案した直後から陳腐化してしまうでしょう。むしろ、どのような状況になっても対応できる人材プールを確保する方が現実的な話かもしれません。

 また、人材の経験は限られてしまいますので、特定の部門出身者などの要件を課してしまうと、想定外の事象が起きたときに意思決定を誤る、もしくは遅れる恐れが出ると思います。

 したがって、社内外から多様な人材を集め、人材プール自体の多様性を確保することも重要な要素となるでしょう。