独立社外取締役の価値ある活用を
ビルゲ・ユルマズ教授
(ペンシルベニア大学ウォートン・スクール)
日本でも独立社外取締役を3分の1以上選任する上場企業の割合が増加していると伺いました。
しかし、一般的に社外取締役は、社内情報へのアクセスが限られていることから、アドバイスをする前に提言すら難しいというのです。
コスト構造の改善、グローバル企業への飛躍、アジアや欧州での事業展開などが現在の経営陣にとってチャレンジングな経営課題であるとき、社外取締役が発揮できる価値はどのようなものでしょうか。
経営陣は情報を持っていても課題解決のためのアイデアがないケースもあります。しかし、2002年のエンロン事件後に取締役会のアドバイザーとしての役割は以前よりも大きなものとなりました。一例を挙げましょう。
ヨガなどのスポーツウェアを製造しているルルレモンという会社をご存じでしょうか。同社の株式の約30%は創業者が保有していました。創業者は、会社の成長を継続していくためには、自身のアイデアやビジョンが不十分であると感じ、またサプライチェーン、マーケティング、研究開発上の問題の解決が困難であると認識していました。
そこでこの創業者は、プライベートエクイティ・ファンドに連絡を取り、支援を求めました。ファンドによる株式の一部買い取り、取締役の派遣の可能性を打診したのです。
このファンドは創業者の保有株式の半数をプレミアム付きで購入し、取締役を派遣することにしました。結果的にファンドが組成したチームのナレッジを会社の成長に取り込むことができ、会社は再び成長軌道に戻りました。
数十億ドル規模の企業の株式を15%保有し、株式の価値は約8億ドルになりました。ファンドにとっても積極的に関わりたい案件になれば一緒に汗をかき、アイデアを出して企業経営に貢献することができるという事例です。
日本でも近年、プライベートエクイティ・ファンドの投資事例が増えており、コーポレートガバナンスを積極的に経営に活かす視点も求められていくのではないでしょうか。