ミュンヘンで開催されたドイツモーターショー「IAAモビリティ2021」。従来のフランクフルトモーターショーが、コロナ禍の中で形を変えて開催されたものだ。現地取材を通して本稿では中国自動車産業の欧州進出スキームを解説したい。電動化を軸とした自動車産業の構造変革は、マクロな視点ではこれまで通りだが、特に中国自動車産業の世界戦略は日本の自動車産業にも大いに関係があるため、ドイツで見られた現状を報告する。(ITジャーナリスト・ライター 中尾真二)
出展社数・来場者数減だが、若返りに成功
これまで、世界の主要都市で開催されてきたモーターショーは、グローバルに情報発信する場として自動車関連企業を中心に賑わってきたが、近年はさまざまな理由からローカル化が進んでいた。IAAモビリティ2021の前回開催となる2019年のフランクフルトモーターショーでは、PSA・FCA(現ステランティス)、ボルボなどドイツ以外のEU圏メーカーの不参加による規模縮小が注目された。東京モーターショーは、メルセデス以外の海外メーカーの出展はなく、大きく2つに分けた会場来場者を合算することでなんとか体裁を保った。この2会場方式は今回のIAAモビリティ2021にも採用され、メイン会場となるメッセと、市内に会場を設定し、来場者40万人(前回56万人)を確保した。出展企業数は744社で、2019年フランクフルトの800社以上からは目減りしている。
今後、各地のモーターショーのローカル化はさらに進むだろう。なぜなら、今後メインテーマとなる「脱炭素」という視点では、どうしても地政学に関連したエネルギー問題が不可分になるためだ。少し前の、メーカーが世界的に押し出すグローバル戦略カーという単一プロダクトでは、地域ごとの環境基準を満たすことが難しい。自動車メーカーは地域、市場ごとの環境戦略に則ってプロダクトを用意する必要がある。
イベントがローカル化しているとはいえ、現地で取材してみると思ったほど賑わいを欠いたとは感じられなかった。現地取材をしたという筆者の個人的な意識バイアスを考慮しても、前回フランクフルトショーと同程度の活気があった印象だ。活気のもとのひとつは、モビリティサービスや人工知能といったソフトウェア業界を取り込んだことだろう。結果として来場者の平均年齢が下がった。主催者発表によれば、来場者の7割近く(67%)が40歳以下だったという。