コロナ禍でも求人倍率が
落ち込まない2つの理由
1つは、コロナ禍で低迷する業種がある一方で、逆に大幅に業績を伸ばしている業種が存在する点です。
業界によっては業績の落ち込みは大きく、新卒採用も絞らざるを得ない企業が存在しますが、一律に厳しいわけではありません。たとえば、巣ごもりなど新しい行動様式の変化が起きたため、デリバリー需要の拡大や企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化推進によって、業績が好調で新卒採用を維持・拡大する企業も多く存在しています。
もう1つは、多くの企業が「新卒採用を絞るデメリット」を経験してきている点です。バブル崩壊後、そしてリーマンショック後の事業環境が厳しい時期に、新卒採用を取り止めた企業、採用人数を大幅に絞った企業は少なくありませんでした。
ただ、事業環境が好転し、いざ攻めに転じようとしたときに、それをけん引する人材がいない……という現象が多くの企業で見られました。これらの反省を踏まえ、「経済環境が悪化しても、新卒採用はある程度維持する」という姿勢を取る企業が増えているのです。
ただ、学生サイドから見れば「新卒採用は堅調」とは言い難いかもしれません。昔も今も、ほとんどの学生の応募が自分が知っている会社、つまりその時代の大手有名企業ばかりに殺到する傾向は変わりません。
そしてコロナ禍の今、「将来的に見て安心・安全な企業に就職したい」との思いが強まり、大手志向の学生が例年よりさらに増えています。しかし採用数が増えているわけではないので、競争は激化の一途。大卒求人倍率を従業員数5000名以上の大手企業に絞ってみると、21年卒0.60、22年卒0.41という厳しい数字になっています。
一方で、従業員数300名以下の中小企業では求人倍率がぐんと上がっています。学生の視野が広がるといいのですが、大手志向にこだわっている学生の中には「いくら応募しても受からない……」と自信を失ってしまうケースもあるようです。