会話の実践でさらなる境地へ
語学学習の魅力の真髄に出合う

 語学の勉強は、実践的な会話に発展すると、楽しさがもう一段階増すので、たとえば参考書を片手に勉強するときも会話の機会を想定したものにしたい。短文や長文は何度も音読することで、単語や文法、その言語が持つリズムなどがなんとなく体に入ってくる。脳の回路もその言語向けにシフトしていく。すなわち会話への準備が着々と整っていく。
 
 会話は、できればその言語を話す外国人とするのが望ましい。緊張感があって学びの意欲を高めてくれる効果があるのに加え、外国人はこちらが一語一語ひねり出すようにして話す言葉に懸命に耳を傾けてくれようとするからである。
 
 当然こちらは「通じなかったらどうしよう。恥ずかしい」などと思ってしまうのだが、たとえば我々が日本語を話そうとする外国人を前にして「日本語が下手だなあ」と最初から嘲笑するだろうか。よほど性格が悪くない限り、その人が日本語を話そうとする姿勢を応援する気持ちでいるはずである。これはこちらが外国語を話そうとするときも立場が逆転するだけで同じなので、何も恐れることはない。相手を信頼して、カタツムリのようなスピードで破綻した外国語をぶつけてみるのがいい。
 
 そこで、「あなたの名前は?」といった、超基礎的な会話でも成立すれば、語学学習の魅力の新しき扉が開く。単純な、教科書の最初の方に乗っているような一文でも、「自分の外国語が通じる」ということにこの上ない感動を覚えるはずである。自分の努力の成果がきちんとした形を得て認められる瞬間であり、また日本人以外の人とコミュニケーションが取れた途端に世界が広がったような感覚が訪れる。