強気相場の終焉か――。カリスマ的な存在感を放つCEO(最高経営責任者)の力が株式市場でもてはやされ始めたら要注意だ。その理由を、米著名投資家ケン・フィッシャー氏が豊富な経営者の事例からひもといた。
真に先見の明を持ったCEOは
株価を押し上げることができる
英雄たちはどこに行ったのか――。私が問うているのは「英雄的CEO(最高経営責任者)」のことだ。強気相場の後半に差し掛かると、投資家はそのような勢いある企業リーダーたちをほぼ完全無欠な存在とみなしがちだ。先見の明を持つ彼らの企業が支配する遠い未来像をむさぼる。
だが、そんな甘い物語は隠れた警告だ。CEOへの称賛は高まる熱狂の合図、いわば到達不能な高みに期待値を上昇させる類いの熱狂だ。では、朗報とは何だろうか。それは、もてはやされるCEOがいないことであり、それこそが世界の株式相場が陶酔の頂上付近にはまだないという強気サインと受け取れる。
そもそも、真に先見の明を持つCEOは、企業の株価を押し上げることができる。そうした人物は、驚きの事業再生を担うエキサイティングな新顔であることが多い。
振り返れば、日本は世に多くの名経営者を輩出してきた。例えば、ソニー(現ソニーグループ)前CEO・会長の平井一夫氏だ。
平井氏が2012年の継承時、ソニーは方向性に欠け4年連続の大赤字にあった。だが、バイオ事業売却やテレビ部門分離などの大改革によって歴史ある大企業は回復し、利益と株価は急上昇した。彼の退任までの6年間でソニーの株価は218%急騰し、日本株全体を打ち負かした。
平井氏の例は重要なポイントを示している。有能なリーダーが一時的な問題を抱える優良事業に出会うと、株式は大抵異彩を放ち、英雄的CEOを生み出す可能性があるということだ。
だが、世の中にそんな英雄があふれているとの声を聞いたなら、投資家としては警鐘と捉えるべきだ。その場合、強気相場は強欲の後半にあり、近く末期の段階に移行する。なぜだろうか。