具体的な質問の仕方はこうする
1.少し先の未来:今期や来期の業績のことです。会社が出している予想に対する進捗率などを具体的に聞いてみます。
たとえば、「今期の業績に影響を与えそうな要因は何でしょうか?」と、深掘りすることで詳しい内容を聞くことができます。
2.財務状況:たとえば、コロナによって財務状況が悪化している企業も多いです。資金調達の計画や手元現金で何年持つ計算かなどの質問が考えられます。
3.投資:企業にもよりますが、M&Aが代表的な事例になります。企業が過去に行ってきたM&Aとその成果、今後の計画をIRに聞いてみます。これによって、その企業が将来どれくらい、成長が加速するかなどを予測することができます。
4.資本政策:一番多い質問は、株主に対する還元策である「配当」についての考え方です。その他に「自社株買い」などがあります。配当に関しては、マザーズ市場の企業やマザーズから東証1部に市場変更したばかりの企業で、ここからもう一段成長しなければならない場合で「配当」を出せない企業もあります。成長加速のために、配当を出さないのであれば、それなりの計画があるはずです。その辺りも深く聞いてみてください。
5.競争力:「競合他社」について質問します。「競合他社はどこですか?」と聞くと、「競合他社はいません」と答える企業が、実に多いです。そこで、自分なりに、競合他社の社名を調べておいて、その企業との「違い」やその企業ならではの「強み」を聞くと、より深い回答を得られます。
6.戦略:「今後の戦略は?」と聞くと、ほとんどの企業は、社名などは公開しなくても、可能性のあるM&Aの話や業務提携など、事業を拡大する戦略を答えてくれます。次のIRニュースに繋がるような話題を既に、水面下で用意しているのです。この辺りが、スッと出てこないと、「次の一手がまだない」と判断します。
7.遠い未来:その企業がどんな未来を描いているのか長期目標(ビジョン)についての質問です。この長期目標は、その企業の理念や創業の思いなどが込められていることも多いです。長期目標が経営陣だけでなく、現場のIRの担当者までに浸透しているかどうかという目線で聞いてみてください。現場の人間が、即答できれば、その企業は組織として強い企業だと考えることができます。その上で、その会社が具体的な目標を持ち、それをどうやって達成しようとしているのかを確認します。
IR部門への電話取材からは、その企業の決算データ以外の価値のある情報を得られる可能性があります。
経済アナリスト、認定テクニカルアナリスト
フィスコ金融・経済シナリオ分析会議 研究員
日本クラウドキャピタル マーケティング・未上場マーケットアナリスト
フジテレビ系列LiveNews αレギュラーコメンテーター
滋賀県出身。同志社大学法学部卒業、京都大学大学院公共政策大学院卒業、公共政策修士。2013年関西の某医療法人に入社後、資産運用トレーダー業務を始める。独力で財務・経営分析力を磨いた結果、資産を3倍にする。2015年独立系金融情報配信会社FISCOのアナリスに転身。上場企業の経営者を中心にインタビューし、個別銘柄分析や日本・韓国・米国経済等の市況分析に従事。入社当時、アナリストだった上司より「堅実な銘柄選定法」として「黒字転換2倍株」のノウハウを受け継ぐ。2017年からは日本クラウドキャピタルにも籍を置き、日本初の未上場マーケットアナリスト兼マーケティング担当として活動。雑誌・Webなど連載多数。「PRESIDENT」本誌にも多数記事を掲載。「プレジデントオンライン」の執筆記事は、2020年の半年間で累計6000万PVを超え、「日本一バズるアナリスト」ともいわれる。2020年11月ラジオ日経にて「馬渕磨理子の5分で教えて!ベンチャー社長」がスタート。初の著書『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』をダイヤモンド社から2021年6月16日に上梓。