国政に軸足を置くための橋頭堡?
荒木氏と「対立」の報道もあるが

 だが、これしきのことで諦める小池知事ではないはずだ。国政復帰の戦略を微調整し、国政新党は予定通り設立するが、基本的には自分は表には出ない。衆院選公示までの間に状況の変化があれば別、との留保を付けた可能性がある。

 一方で朝日新聞デジタルに3日掲載された記事では、小池知事が「会見を強行した荒木氏に怒っており、(都民ファの)特別顧問職を辞することも検討しているようだ」との小池知事周辺の一人の声を紹介。小池知事と荒木氏は深刻な対立関係にあると指摘している。

 とはいえ、7月の都議選で急きょ、小池知事が都民ファ候補の応援に駆け回って盛り返したように、都民ファの勢力は都議会で小池知事の「足場」として欠かせず、国政も含めてその影響力を維持したいと考えているだろう。

 また、荒木氏ら都民ファ現執行部が小池知事の知名度や人気に頼らず、国政選挙を戦い抜けるわけがない。荒木氏も会見で「小池知事への出馬要請はしていない」としながらも「当然ながら小池知事の応援・相談をしながら、連携させていただきたい」と述べ、“小池依存”ぶりを隠さなかった。

 そんなファーストの会は、一体どの政党と連携するのだろうか?

 荒木代表は自身らを「保守中道」と説明している。自民党の補完勢力という意味であろう。すでにいくつか名前が挙がっている。日本維新の会、国民民主党などなど。西の維新、東のファースト。自治体の首長がオーナーを務める国政弱小政党同士で傷をなめ合うのも悪くはない。

 一方で、選挙が近づけば、国民民主党から「ヘルプコール」があるかもしれない。小池知事と玉木雄一郎代表はこれまでも会合を重ねてきた仲である。

 いずれにしても、いくら小さな塊が寄り合っても現状を変える力になるとは到底考えられないが、小池知事にしてみれば、今回の衆院選は次善の策として国政への足がかりを確保できれば十分と割り切っているのではないか。荒木氏の独断とは、私には少し考えにくい。

 もし、小池氏が国政復帰を本気で考えているのなら、さらに、今回の自民党総裁選や組閣で存在感を急落させた、二階俊博前幹事長との連携も十分にあり得る。二階氏も小池氏もかつて新進党などで行動を共にし、生粋の自民党員ではしょせんないのだから。

 また、冷や飯を食わされることになった河野太郎前行革担当相と小池知事とのツーショットも、非現実的だが素人的には魅力的である。

 衆院選は19日公示、31日投開票の日程が固まった。ファーストの会にとっては残された時間はほとんどない。ただ、岸田政権の先行き次第では、自民党内に嵐が吹き荒れることも期待できよう。来年の参院選も視野に入れつつ、小池知事は4年ぶりに国政への第一歩を静かに踏みだすことになるのかもしれない。