女性かつシニアの「二重苦」
逆境の中、自分で道を切り開く覚悟を

 上原さんはラインマネジャーからは外れたが、現在も専門性と経験に基づいた業務を続けている。まだまだ頑張りたいし、面白い仕事に挑戦していきたいと思う。けれど、新しい仕事や面白そうな仕事は若手にどんどん割り振られていく。

 若い人を育成するのが大事なのはよく分かっている。彼らには頑張って成長してほしいと思う。でも、時々気持ちがざわざわする。「これまでの努力はなんだったのだろう…」と。

 この先、組織で生きていくことを考えれば、若い人の邪魔にならないように「わきまえて」いかないとだめなのかなとも思う。「もう、ひねくれるのはやめた」と上原さんは言う。組織において今後何を目指すべきか分からずに、今はモチベーションをなんとか維持している状況だ。

 男女雇用機会均等法が施行されて35年。いわゆる「第一世代」の女性たちの多くは、男性中心社会の中で、おそらく男性よりもいろいろなものを犠牲にしてきた。男性同様の地位を獲得するには、プライベートよりも仕事を優先せざるを得なかったことも多かっただろう。

 若い頃は「女性だから…」ということで足を引っ張られ、男女平等が進んできた今は「シニアだから…」ということが、働き続けた女性たちの重荷になる。女性そしてシニアという二重苦の壁が、50代の働く女性を待ち受ける。

 だが、嘆いていても始まらない。逆境の中、男性中心の、いわば常にアウェーで頑張ってきた女性たちだからこそ、上原さんのようにネガティブな感情とは決別し、前を向いて自分の力で道を切り開く努力をしてほしいと思う。

 上を目指すだけじゃないセカンドキャリアは、考えようによっては新しいチャンスかもしれないのだから。