原型を作り、土俵を作り、ルールを作った

 1996年末、倒産まで90日の危機にあったアップルに復帰し、2000年に正式なCEO(それまでは、暫定CEOを名乗った)に返り咲いたジョブズが同社を成功に導いた秘訣。それは、たとえトップシェアを取れなくとも、参入した分野のほぼすべてにおいて原型となる製品を作り上げ、他社がフォローせざるを得なくなる状況を作り出したことにある。古くは、Apple II(IBM PCがフォロー)やMacintosh(Windowsがフォロー)もそうであり、音楽プレーヤーのiPodも、iPhoneもiPadにも同じことがいえる。

 確かに、Apple IIの前にはAltair(アルテア)という個人「でも」使えるコンピューターがあり、Macintoshの前にはゼロックスのGUIワークステーション実験機であるAltoがあり、iPod以前にもデジタル音楽プレーヤーは多々発売されていて、iPhoneも世界初のスマートフォンではなかった。しかし、アップルは、それぞれのジャンルにおいて、確かに突き詰めればそうなるだろうと思える原型を開発し、実際に市場に送り出してきた。

ジョブズは常々、Apple製品の背面は、他社製品の正面よりも美しいと話していたが、初代iMacでは、半透明の筐体を採用して中身の美しさまで印象付けた。彼は基板の配線パターンにもこだわることで知られていたが、iMac以前には、よほどのマニアか修理工以外は目にすることが少なかったジョブズは常々、Apple製品の背面は、他社製品の正面よりも美しいと話していたが、初代iMacでは、半透明の筐体を採用して中身の美しさまで印象付けた。彼は基板の配線パターンにもこだわることで知られていたが、iMac以前には、よほどのマニアか修理工以外は目にすることが少なかった(Copyright Apple Inc.)