誤情報の拡散で分断を助長し
民主主義を弱体化

 フェイスブックの問題は子どもや10代の若者への悪影響だけにとどまらない。

 特に深刻なのは政治的な誤情報拡散が社会の分断を助長し、民主主義を弱体化させているのではないかと批判されていることだ。

 たとえば、フェイスブックは2020年11月の大統領選が行われるまで、政治的な誤情報拡散を抑える措置を導入していたが、選挙の後、これを停止してしまった。

 理由は「ユーザーの安全より利益を優先したため」といわれているが、その結果、トランプ前大統領の「大規模な選挙不正が行われた」という誤情報が拡散され、それが死者5人と500人以上の逮捕者を出した連邦議会議事堂の襲撃事件を引き起こす原因の一つになったのではないかと指摘されている。

 トランプ氏と彼の取り巻きは選挙結果を覆そうとして起こした60件以上の訴訟で全て敗訴し、彼の部下だったウィリアム・バー司法長官(当時)も「選挙で不正が行われた証拠はない」と言明した。

 にもかかわらず、トランプ氏はフェイスブックやツイッターを使って誤情報を拡散し続け、それを信じて踊らされた支持者たちが中心となり、襲撃事件を起こしたのである。

 2021年1月6日の事件の後、トランプ氏のフェイスブックとツイッターのアカウントは凍結され、投稿できなくなったが、同氏は現在も支持者集会などで虚偽の主張を繰り返している。

「米国の民主主義を弱体化させているのではないか」という批判に対し、トランプ氏は「米国の民主主義を弱体化させているのは私ではない。それを救おうとしているのが私だ」と反論している。

 フェイスブックがトランプ前大統領の誤情報拡散と議会議事堂の襲撃事件に一定の役割を果たしたことは間違いないだろう。