コロナ禍に銀座一等地にオープンした香港料理店

  2015年の拙稿「横浜中華街が色あせた今、中華料理は“銀座”が熱い」では、「新しい中華料理の発信地の地位を固めつつあるエリアがある。池袋と銀座だ」と指摘した。

 銀座が「新しい中華料理の発信の場」という傾向は、コロナ禍でも、依然として衰えず勢いを見せている。

 8月中旬に、銀座7丁目に、2つのフロアをもつ香港料理「盛記」が静かにオープンした。上海出身のオーナー・李敏華氏は1988年に来日した新華僑。チャーシュー・焼き肉・焼き鴨などが売りのロースト飯(焼いた肉を乗せたご飯)、飲茶の主役でもある腸粉などが懐かしい香港の味への追憶を誘う。客単価は7000~1万2000円とかなり強気の値段設定だが、李氏は、「うちは、総料理長、副料理長、前菜料理長、点心料理長などはすべて香港人の料理人で、本場の味を皆さんにご堪能いただけます」と胸を張る。

 入居したビルは銀座の一等地にありながら、テナント案内図を見ると、空きフロアが複数ある。そんななかで、盛記は6階と7階を利用している。

 銀座で中華レストランを開くのが李氏の長年の夢だった。コロナ禍が始まる前にすでに店舗の物件を探すなど、その準備作業を始めていた。コロナ禍以降も、開店の意志は揺らぐことなく、李氏の意志と行動に感銘したビルの大家が好条件で盛記の開店を支援したという。

 盛記がオープンしたとき、緊急事態宣言発出下ということを配慮し、あえてオープニングセレモニーをやらなかった。献花の申し出も謝絶した。「来年、開店1周年になるとき、営業も軌道に乗るでしょう。そのとき、盛大にやりたいです」と李氏は言う。