シニア市場は「売り手市場」から「買い手市場」になっていく

 このような、商品をじっくり吟味して衝動買いをしない「スマートシニア」が増えたため、有料老人ホーム市場では常に供給過剰となっている。これが、有料老人ホーム市場で価格破壊が起きた根本的な理由である。

最近は、東京・横浜あたりですら、入居一時金が1200万円を超えると高いと言われるようになった。東京以外の地域ではもっと安くないと売れなくなっている。さらに、最近は入居一時金ゼロという例も増えてきた。

有料老人ホーム市場は、2000年の介護保険導入前と導入直後でも大きく変わったが、その後も劇的に変化し続けている。数年前の常識は、数年後には通用しない。そうした事例がたくさん見られる市場だ。

このような常識の覆りは、製造業主体の市場にも多く見られる。もはや、かつてのように大量生産して、大量流通すれば売れるという時代ではない。

つい数年前まで世界のトップを走っていた日本の大画面テレビ産業は、いまや瀕死の状態だ。劇的な価格破壊が起き、数年前に大量生産を見込んで稼働し始めた大規模工場が、わずか数年後にリストラの対象になっているのが現実だ。

商品の売り手は、常に買い手を注視していなくてはならない。買い手のわずかな変化を感じ取り、その先に来る大きな変化を常に先取りして柔軟に適応しなければいけない時代なのだ。シニア市場も、その例外ではない。

シニアの「スマート化」を加速するスマホとタブレット

 スマートシニアが、今後ますます「スマート化」する兆候が見られる。そのトリガーは、スマートフォン(スマホ)とタブレットだ。電通によるパソコン・スマホ・スマタブ(タブレットのこと)に関する「利用実態調査」によれば、2012年5月の普及率は各々、パソコン91%、スマホ29%、スマタブ7%である。

ちなみに、この調査の対象は15歳から59歳までの男女であり、60歳以上のシニア世代ではない。しかし、現時点で50代の人は、10年後の2022年には60代になる。このことを考慮すると、調査結果は、近未来の「新しいシニア層」の消費動向を予想するのに重要な示唆を与えてくれる。

この調査で興味深いのは、ショッピングに利用する金額の差だ。スマホの場合、基本料やデータ料金を除くサービス利用料が月に6600円。そのうちの5070円が、ネットショッピングである。

これに対してタブレットでは、サービス利用料が月に1万1780円。そのうちの7980円がネットショッピングとなっている。タブレット利用のほうが、スマホ利用の場合よりも3000円近くショッピング利用金額が大きいことがわかる。