10年間で大きく変わったシニアのネット利用率

 現代は消費行動に及ぼすネットの影響が大きい。実はシニアの消費行動も例外ではない。私は、1999年に東京、名古屋、大阪で、50歳以上の方を対象にネット利用率の調査をしたことがある。その時のネット利用率はたったの3%だった。当時は、50歳以上でも100人に3人しかネットを使っていなかったのだ。

それから13年経過して状況はどう変わっただろうか。2010年12月現在、50代の利用率が88%、60代前半で70%、60代後半で58%、70代で39%まで増えた。あと10年経つと60代後半以上の年齢階層の利用率がもっと上がるだろう。これでおわかりのように、シニアにおけるネット利用率の上昇は時間の問題である。

スマートシニアの増加で、売り手の論理が通用しなくなる

 このように、近い将来はシニアでも大半の人がネットを使って、簡単に手軽に安く情報を入手して賢く消費行動を取る時代になる。私はいまから13年前の1999年9月15日の『朝日新聞』で、ネットの時代の新たな高齢者像である「スマートシニア」というコンセプトを提唱した。

スマート(Smart)には、「痩せる」という意味はない。スマートとは「賢い」という意味だ。だから、スマートシニアとは「賢いシニア」のことである。13年前の私の定義では「ネットを縦横に活用して情報収集し、積極的な消費行動を取る先進的な高齢者」のことだ。

IT機器が普及すると市場の情報化がどんどん進んでいく。すると、市場がガラス張りになり、商品の売り手はごまかしが利かなくなる。ネットで見れば、ほとんどのモノが、どこで、いくらで売られているかがわかってしまう。

こうして、市場はそれまでの「売り手市場」から「買い手市場」に変わっていく。情報武装したスマートシニアが増えることで、シニア市場もどんどん「買い手市場」になっていくのだ。その結果、従来の売り手の論理が通用しなくなる。