また、レアアース(希土類)を含む重要鉱物の分析を進め、サプライチェーンを強靭化。先端分野における重要技術の実用化を加速する。

 具体的には、国際競争に打ち勝つための国家戦略として、研究開発から実証・実用化までを迅速・機動的に推進する「経済安全保障重要技術育成プログラム」を立ち上げ、自国での技術構築や社会発展につなげる。また、官民で連携してサイバー空間における脅威への対処能力の向上も目指し、サイバーセキュリティ演習環境も拡充。新型コロナウイルスの感染拡大時に不足した医薬品の安定供給を支援する事業も強化する。

 財政の単年度主義の弊害是正を図るため、新たに基金を創設し、こうした国家的課題を計画的に取り組む方針だ。

経済安保政策の中には
「国民の安全・安心」も盛り込む

 わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、経済対策の原案には「国の安全保障の確保を含む国民の安全・安心」というテーマも盛り込まれた。

 海洋進出を進める中国や、核や弾道ミサイルの開発を重ねる北朝鮮をにらみ、「我が国の領土・領海・領空、そして、国民の生命と財産を断固として守り抜く」と明記。自衛隊の安定的な運用態勢の確保や戦略的な海上保安体制構築の推進、危機管理強化のための情報収集衛星の開発に努めるとしている。

 また、アフガニスタンからの在外邦人らの国外退避で多くの課題が浮き彫りになったことを踏まえ、制度や運用の見直しを含めて在外邦人の保護体制を強化。「世界一安全な国、日本」をつくるため、テロなどの組織犯罪対策も進める。

 外相や防衛相などを経験し、外交・安保政策に自信をのぞかせる岸田首相。最近では、敵基地攻撃能力の保有についても積極的に検討する考えを示し、国の安保政策の指針となる「国家安全保障戦略」の改定も指示している。

 ただ、連立政権を組む公明党には慎重論も根強く、その先行きは不透明だ。外務省幹部からは「防衛計画大綱や中期防衛力整備計画を年末に改定するとなれば、超スピードでの大きな変化になる。果たして、そこまで実現することができるのだろうか」といぶかる声も漏れている。

 なお、ダイヤモンド・オンラインでは、独自に入手した岸田首相が総選挙後に策定する経済対策の原案を基に、『岸田内閣「経済対策の原案」を入手、謎に包まれた“新しい資本主義”の中身』『岸田内閣「経済対策の原案」を入手、“デジタル田園都市構想”の具体的中身』の2記事を配信している。併せてご覧いただきたい。