真面目なリーダーほど
「やる気の低下」を気にする
また、周囲から期待されて1年前に入社し、「やる気」に満ちていた新人が、定例会議のZoom画面越しにくすんだ表情を浮かべている。ほとんど何も発言しない。
パフォーマンスは求められるラインを超えてはいるが、要領よく仕事をこなそうとする態度が目立ってきた──。
そういうとき、われわれは「モチベーションが下がっている」という診断を下しがちだ。
そして、「モチベーションを高めるためには、何をすればいいだろうか?」という発想に縛られてしまう。
たいていのリーダーは「部下のモチベーションを高めること」が自分の仕事だと考えている。
だから、チーム内に大きな熱量差が生まれている場合、そこになんらかの対策を取ろうとするわけだ。
最近の仕事ぶりを褒めてみたり、「きっと結果を出せる」と励ましたりする人もいるだろう。
あえて難しい課題を与えて、チャレンジ精神に火をつけるやり方もあるかもしれない。
また、賞与・昇給・昇進などのアメをちらつかせたり、叱責・異動・減給などのムチで脅したりといった古典的なオプションも用意されている。
場合によっては、そんな人材をチームから切り離し、熱量の低さが周囲のメンバーに伝播しないようにすることもあるだろう。
これはある種の「隔離策」であり、当人が熱量を取り戻すことについては断念するわけだ。
いずれの打ち手をとるにせよ、これらは一定の効果を発揮するはずだ。
少なくとも表面的には部下の行動が変わり、チームのパフォーマンスが高まることもある。
うまくいけば、その「がんばり」がチームの業績を大きく牽引することすらあるかもしれない。
だからこそ、ポジティブな仕方であれ、ネガティブな仕方であれ、メンバーに一定の外的刺激を与えて、その行動を変容させることこそが「リーダーシップの本質」だと盲信されてきた。
職務を放棄している「事なかれリーダー」を除けば、真面目で優秀なリーダーほど、なんとかチーム内の熱量の差を乗り越えようと、モチベーションを高めるためのアクションを繰り返しているはずだ。
しかし、結論から言えば、こうしたやり方はもはやうまくいかなくなりつつある。
「熱量の低い部下に働きかける」タイプのリーダーシップは、ハラスメント回避やリモートワーク、VUCAといった環境変化の結果、ある種の機能不全に陥っているからだ。
あなた自身は、また、あなたの上司は「モチベーション幻想」にとらわれていないだろうか?
最近、「モチベーションが低い」と感じた人物や言動、それに対して自分が感じたことを振り返ってみることをおすすめしたい。