発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
今回は、本書で紹介した「料理の原理原則」を使ったレシピを紹介します。
カレーの作り置き。多くの人がしたことがあると思います。昨日作ったカレーは不思議にうまい。冷たいまま温かいご飯と一緒に食べるのもオツなものですよね。しかし、巨大な鍋で大量のカレーを作り置くのはあまりお勧めできません。わりと腐りますし、栄養も偏ってしまう。そこで、「いつでも10分でカレーを食べるにはどうすればいいか」と考えたのがこのレシピです。答えは簡単、玉ねぎを炒めればいい!
借金玉メソッドの「飴色玉ねぎカレー」です。タマネギは包丁でカットして軽く塩をして、10分ほど待って、炒め始めましょう。もちろん油はたっぷり。するといっぱい水がでるのでしばらく放置。ここでかき混ぜると温度が下がって無駄な時間をとります。
水がなくなってきたら、焦げるギリでオール強火を維持しながら、最低限の混ぜで走りましょう。怖いと感じたら火を弱めてかまいませんが、その分時間がかかります。
20分くらいで写真のようになるので、このへんで大鍋の限界。強火だとなにやっても焦げる。
テフロンフライパンに移動。これでまた最大火力が使える。このへんで、カットの甘かった玉ねぎの水分が鬱陶しくなるのでハンドミキサーで粉砕しましょう。このカットのまま最後までやると、弱火で長時間やる他なくめちゃめちゃ時間かかるうえコゲやすい。このやり方がオススメ。ハンドミキサーは食生活を豊かにしてくれますよ。
物性が素直になるので、オムレツみたいな振り方が可能になります。混ぜすぎると時間がかかるだけなので、ここも焦げる寸前を戦うのがコツ。大鍋の頃と違って鍋をブンブン振れるから楽になります。
僕のレシピだと玉ねぎ5キロから完成品はこれくらい。ここからなんでも作れて便利ですよ。冷凍にも強いので小分け冷凍しましょう。塩が効いてますから、常温でも結構もちます。
コツは火力にビビらないこと、ただ一点です。玉ねぎのカットはプロ視点だと「クソ粗い、ひどすぎる」ですが、これよりだめな人は素直にスライサーとか使いましょう。色んな料理のベースになって便利です。
あと、途中で「アカン、何やってもコゲそう!」が発生した場合は水突っ込んでください。水で微調整、大事。意外なほどリセットできてしまう。コップに水を用意しておくといいでしょう。その3秒でコゲか回避かの判定が出ます。
結構ムズいので、普段料理しない人は一発成功しない可能性が高いです。そういうときは素直に火を弱めて時間かけましょう。これは最速でやるためにリスクをとる調理法です。逆にいえば、ノウハウを手で覚えれば非常に素早く、かつ大量にやれるようになります。やる価値はありますよ。「飴色玉ねぎ」ほど多くの料理で用いられるベースは他にないのですから。
さて、実践編、カレーを作っていきます。まず、スパイスをテンパリングしましょう。その辺にあったのてきとうに入れました。スパイスも凝り始めたら無限の沼ですが、実際を言えば「胡椒単騎」とか「ターメリックと生姜まで絞った」でも、わりと「カレー」って成り立ちます。胡椒だけのカレー、美味しいですよ。
重要なのはむしろ、「粉ではなくホールで使う」とか「粉末にするなら作る前にスパイスミルで挽く」「粉は入れ過ぎると苦い」などですが、応用編なのでとりあえず忘れて構いません。ベースの玉ねぎがしっかりしてればスパイスは適当でいいとだけ覚えておきましょう。
生姜、唐辛子をワンテンポ遅れてイン。豚コマイン。撮り忘れましたがマッシュルームもイン。
ここでさっきの基本のアメ玉が入ります。続いてトマトを。いい感じですね。水気がたりなければ水入れていいですが、入れすぎると死にます。玉ねぎと炒めた肉のダシだけで成立させるカレーなので、水分が増えるとうまみ不足が起きちゃいますね。
マッシュルームなのにキノコ感弱いなということで、自作のポルチーニオイルでドーピングしましょう。これが豪快にキノコくせえんだ。この辺は好みです。適当なものを入れていいでしょう。
このように仕上がります。パクチーが意外と合うよね。うまいうまい。
「基本の飴色玉ねぎ」さえ作っておけば10分で様々なカレーが作れます。実をいうと、スパイスはナシでも構わなくて、イカとトマトを合わせれば本格的な「イカのトマト煮込み」ですし、鶏肉を合わせれば「鶏肉のトマト煮込み」です。実をいうと、トマトも削っちゃって問題ありません。「イカと飴色玉ねぎの炒め煮、月桂樹とオリーブオイルの香りを添えて」なんてのも、なかなか乙な料理です。
このような備蓄ができると心が豊かになりますね。入れてるスパイスはカレー警察が怖いから各自深めてください。そのへんにあるの適当に入れりゃうまいよカレーなんて。
味付けは塩です。醤油とかソースは一発ですべてが破壊されるので絶対に入れないでください。日本人は慣れ過ぎて感覚がくるってますが、「醤油」より強いスパイスはほとんどありません。全部醤油味になってしまう…。ヨーグルトは入れてもいいです。
炒め玉ねぎさえ備蓄しとけば10分でうまい料理にありつける。最高ですよ。