「多額の報酬をエサにインフルエンサーを呼び込もうとするMetaの動きは、TikTokに取られている10代のユーザーの支持を取り付けるための戦略に他なりません。一方、TikTokを擁するバイトダンスは、制作支援金、動画制作のノウハウ提供などでクリエーターを支援する制度を立ち上げるなど、新たなインフルエンサーの育成に余念がありません。両社に共通しているのは、市場拡大のためにはインフルエンサーの存在が必要不可欠であり、クリエーターの獲得、育成には投資を惜しまないというスタンスです」

対立の裏に
米中貿易摩擦の影響も

 10代のユーザーからの人気という点で、TikTokの後塵を拝しているInstagramとFacebookだが、サービスの歴史は長く、20代以上の層からは依然として高い支持を得ている。素人目からすると、「TikTokつぶし」にそこまで躍起になる必要はないのではないかと思ってしまうが、内情は複雑なようだ。

「TikTokの新しい点は中国発のSNSであるということです。これまで世界的に流行したSNSの多くはアメリカ発でした。トランプ政権から続く米中の貿易摩擦は依然としてくすぶり続けており、アメリカを代表する企業であるMetaは過度な対抗意識を持っているのかもしれません。過去には、トランプ前大統領が機密情報の漏洩阻止を理由に、TikTokの全面禁止措置を働きかけたこともあり、Facebook&InstagramとTikTokの覇権争いは、今後は政争の具としてフィーチャーされる可能性も十分考えられるでしょう」

 激化するSNSプラットフォームのインフルエンサー獲得競争の裏には、緊迫する世界情勢が透けて見えるのだ。