お金を「貯める」ことではなく「使い切る」ことに焦点を当てた、これまでにないお金の教科書が、注目を集めている。『DIE WITH ZERO ~人生が豊かになりすぎる究極のルール』という翻訳書だ。昨年の発売からじわじわと口コミで話題となり、続々と重版が決まっている。現地では経済学者、起業家、ニューヨークタイムズ紙など多方面から絶賛を受け、日本でも著名な起業家、書評家、投資家、マネー系YouTuberなどから「滅多にない超良書」「これぞ理想の生き方」と絶賛の声が相次いでる。人生を最大化するために、金と時間をどう使うべきか? タイトルにある「ゼロで死ね」の真意とは? さまざまな気づきを与えてくれる本書から、その一部を抜粋して紹介する。
①「死ぬまでにやりたいことリスト」を作成する
あなたはすでに、はっきりとした「死ぬまでにやりたいこと」のアイデアをいくつも頭に描いているはずだ。
たとえば、子どもを持つ、ボストンマラソンを走る、ヒマラヤをハイキングする、家を建てる、特許を申請する、起業する、オペラを鑑賞する、スーパーボウルをスタジアムで観戦する、イエローストーン国立公園に行く、秋のバーモント州を旅行する、子どもたちとディズニーランドに3回行く……。
こんな感じで、自由な発想でやりたいことをいくつも書き出してみよう。このリストは、あなたという人間をよく表すものになる。あなたは、人生で積み重ねた経験でつくられているからだ。
なお、リストを作成するときは金について心配する必要はない。これは重要なポイントだ。このリストをつくる目的は、「どのような人生を送りたいか」を想像することだ。この時点では、金のことは気にせず、死ぬまでにやりたいことを無条件で考えてみよう。
②「やりたいこと」を5~10年区切りのバケツに入れる
リストを作成したら、次はそれぞれの「やりたいこと」を、実現したい時期のバケツに入れていく。たとえば、「残りの人生であと50回スキーに行きたい」のなら、それを実現したいのは、どの5年区切り、または10年区切りの期間になるだろうか。まだ金のことを気にする必要はない。その経験を人生のどの時期にしたいかということだけに注目しよう。
「やりたいこと」をバケツに入れていく作業は、簡単なものもあれば、難しいものもある。はっきりとどの時期に実現したいかがわかるものもある一方で、旅行など、いつでもできると思えるようなものもある。
ただし、すでに述べたように、70代や80代のときよりも、40代や50代のときのほうが旅をしやすいのは事実だ。「やりたいこと」のなかには、人生の特定の時期に行ったほうがより満足度が得られるものもあるだろう。
たとえば、一般的に、登山をしたりロックコンサートを鑑賞したりするなら、若いほうが高齢になってからよりも楽しめる。当然ながら、体力が求められる活動は、全般的にタイムバケットの左側(若い時期)に寄ることになる。
タイムバケットなら、人生を積極的に充実させられる
「死ぬまでにやりたいことリスト」に期間を設定すると見えてくるのは、物事にはそれを行うための相応しい時期がある、という事実だ。また、期間を明確にすることで、同じ期間での両立が難しい「やりたいこと」があることに気づくかもしれない。具体的な計画を立てなければ、いつまでたっても実現しないものがあることもわかるだろう。
これは、いわゆる一般的な「死ぬまでにやりたいことリスト」(バケットリスト)とは対照的だ。期間を区切らない従来型のバケットリストは、年齢を重ね、人生の残り時間が少なくなってきたことに気づいた人が、焦る気持ちで、生きているうちにやりたいことを書き出すことが多い。事前に計画していたというよりは、慌てて残り少ない時間で何かをしようとする、受け身の発想で生まれがちだ。
一方のタイムバケットでは、人生に対して積極的なアプローチが取れる。残りの数十年の人生を5年や10年の単位で分け、期間内でやりたいことを実現させていく具体的な計画を立てられる。漠然と「死ぬまでにできたらいいな」と夢想することとは大違いだ。やりたいことを現実的な問題としてとらえられるようになる。
(本原稿は、ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』からの抜粋です)
1969年、アメリカテキサス州ヒューストン生まれ。アメリカ領ヴァージン諸島を拠点とするコンサルティング会社BrisaMaxホールディングスCEO。アイオワ大学を卒業後、ウォールストリートで働いたのち、エネルギー分野のトレーダーとして成功を収める。現在は、1億2000万ドル超の資産を抱えるヘッジファンドのマネージャーでありながら、ハリウッド映画プロデューサー、ポーカープレーヤーなど、さまざまな分野に活躍の場を広げている。