経営陣の多様性が求められる時代
限られた時間の中でグローバルに目を配り、日進月歩で進化するデジタル空間を理解しつつ、目の前の経営課題のみならず、未来を構想するのは決して容易なことではありません。時空間が広がり、関与する人・物・事すべてが多様化している現代においては、視野を最大限広げなければ全体は俯瞰できず、また、より一層抽象度を高めなければ、全てを包含する場を定義することはできません。
そのためにも、より多くの視点を確保することは非常に有効であり、第17回で企業の生き残りの術として紹介した経営陣の多様性はここでも効果を発揮します。
現代の経営者の最大の課題は、この大きく変化しつつある場を抽象レベルで把握したうえで、経営資源の中でも最も重要である従業員のエンゲージメントをいかに高めるかということなのです。
昨今「パーパス(Purpose)経営」という言葉が注目されムーブメントとなっていますが、パーパスを定義すれば従業員エンゲージメントが高まるわけでないことを決して忘れないでください。
今回は、日本企業の従業員エンゲージメントが世界的にも最低レベルにあるものの、過去の経営理念を持ち出してもそれを高める結果には繋がらない理由について解説しました。次回はどのようにして日本企業がそれを高められるかについて考えてみましょう。
ビジネスコンサルタント・著述家
株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ、クニエ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)『具体⇔抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)等。
坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者・
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、日本コカ・コーラ、