不動産担保融資が焦げ付き、
金融機関相互の資金貸借が凍りつく

 不動産担保融資が大量に焦げ付き、金融機関の倒産が懸念されるようになると、金融機関相互の資金貸借が凍りつく。他の金融機関に貸すときは相手が倒産しないという暗黙の前提があるため、取引先に貸す場合と異なり利ざやはほとんどなく、担保もないことが多い。この暗黙の前提が成り立たなくなると、取引が成立しなくなってしまう。

 そうなると、他の金融機関から借りていた金融機関は、返済のために顧客から融資を引き揚げなければならなくなる。融資の返済要請を受けた借り手は、他の金融機関から借りることが容易ではないので、苦境に立たされかねない。

 銀行が融資をする際には借り手の信用力を慎重に調べるので、既存取引先ならばともかく、新規取引先への融資には時間がかかる。加えて、銀行自身が「金融不安の今だと、預金者が不安になって預金を引き出しに来るかもしれない。それに備えて金庫に札束を積み上げておこう。貸し出しをするのは危険だ」と考え、融資に慎重になる可能性もある。

自己資本比率規制が
貸し渋りを招く

 金融機関相互の貸借が凍りついても、中央銀行が金融機関向けに融資をすれば事態が改善する場合も多いが、自己資本比率規制による貸し渋りは深刻であった。

 世界中の主な銀行は、自己資本比率規制に服している。これは、大胆に簡略化すれば、「銀行は自己資本の12.5倍までしか融資をしてはならない」という規則である。実際の規則は融資額の8%以上の自己資本を持たねばならない、というものだが、意味するところは同じだ。

 銀行の融資が焦げ付いて銀行が赤字になると、自己資本が減るので貸して良い金額が減ってしまう。その分は既存の融資を回収する必要が出てくるかもしれず、そうなれば「貸し渋り」「貸しはがし」が広く行われることにもなりかねない。

 これに対しては、中央銀行が融資をしても意味がない。銀行は金がないから貸さないのではなく、貸してはいけないからだ。