とにかく対話の回数を増やすこと
次に重要なのは、経営者がトップダウンで未来像を押し付けたり理念への落とし込みをしたりしてはならない、ということです。前回解説したように、戦後から高度成長期と比べると現代の経営の場を構成する時間軸と空間軸は複雑かつ広範にわたっています。このような環境下で経営者が従業員に対し一方的に理想を押し付ければ、現場は一気にしらけます。
経営者が会社全体の未来像を提示したあとは、経営者と現場が対話を繰り返すことでより具体的な未来像が共創され、理念も後追いで内から醸成されます。経営者の考えを一方的に押し付けるのではなく、現場と共創するという姿勢が極めて重要です。そのプロセスを経ることで、抽象レベルでの未来像が次第に洗練され、それを個別の事情に合わせて具体化することができます。
対話、といっても肩肘張った堅苦しいものである必要はありません。カジュアルな場であっても回数を重ねることで経営と現場がお互いを理解し、未来を共創することにつながります。8つの国籍の多様なメンバーが在籍する筆者の会社では、毎日の朝礼や週次会議を通してお互いを理解することに努め、できるだけ対話の機会を増やすことで、未来像や理念の共有・共創を目指しています。