コロナ禍や自粛生活などの「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じている。ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまう。
そんな中、このコロナ禍に22万部を突破したベストセラーストレスフリー超大全』では、著者の精神科医・樺沢紫苑氏は、ストレスフリーに生きる方法を「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」で紹介している。「アドバイスを聞いてラクになった!」「今すべきことがわかった!」と、YouTubeでも大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫る。

精神科医も呆れる「親の『うるさい小言』への対処法」ベスト1Photo: Adobe Stock

「もしかして毒親?」

「親にいつも小言を言われます」「親が細かいことを、いちいち指示してきます」。子どもの立場としては、同じことを親から何度も言われて「うんざり」するのは、誰もが経験することだと思います。

 中には、親の過干渉が度を超して、暴言や暴力などで子どもに支配的に接し、子どもの性格や人生をゆがめてしまう「毒親」も少なくありません。

「親との関係」についてのアンケートによると、子どもの3人に2人が親のストレスを抱え悩んでいるそうです。その問題について説明しましょう。

 微に入り細に入り、親があなたに細かく口を出してくるのはどういう心理なのでしょう。それは簡単です。あなたのことが単純に心配なのです。あなたを愛しているからです。

 自分の最愛の子どもに、よりよい人生を生きてほしいという気持ちがあります。だから、「ああしたらいい」「それはダメだ」「こうしなさい」と細かくアドバイスしてしまうのです。

笑顔で「ありがとう」と言う

 そうした親の愛情をしっかりと受け止め、「いつも心配してくれてありがとう」「いつも私のことを考えてくれて本当にありがとう」と心から感謝の言葉を述べることは大切です。

 あなたが笑顔できちんと感謝の言葉を述べることができるならば、親と子の愛情のキャッチボールが成立し、親は満足し、温かい気持ちになるはずです。親子関係が丸くおさまります。

 ですから、小言を減らしてほしいと思うなら、笑顔で「ありがとう」と言うことが重要なのです。

「そんな嘘は言いたくない」と言う人もいるでしょうが、嘘ではありません。「(アドバイスしてくれて)ありがとう」ではなく、「(自分のことを気遣い、愛してくれて)ありがとう」という意味だからです

 ここで、邪魔者を追い払うような口調で「わかった、わかった」と言ったり、「いつも同じことばかり言ってうるさいな」と、反抗心を表してしまうと逆効果です。

 親としては、自分の愛情が届いていないと不全感を持ちます。さらにアドバイスを増やさなくてはと思い、余計に小言が増えてしまうのです。

親のアドバイスは30年古い

 アドバイスの「内容」と「思い」は分けて考えるべきです。

 たとえば、「子どもを銀行に就職させたい」と考える親はたくさんいます。しかし、「銀行に就職すれば一生安泰」というのは、30年以上前の古い発想です。窓口業務のほとんどは自動化され、現金はコンビニATMで下ろせますし、キャッシュレス化が進めばATMすら激減するでしょう。

 我が子の幸せを願って「銀行に就職してほしい」と思っているのに、時代と逆行するマイナスのアドバイスを無意識にしているのです

 親は自分の常識、知識、経験を基にアドバイスしますが、そのアドバイスはどうしても古いものになってしまいます。いつの時代でもそれが当然なのです。

親のアドバイスは笑顔でスルー

 親とはいえ、他者からの意見やアドバイスは、あなたにとって決断・行動を決める「参考材料のひとつ」にすぎません。親の言うことをそのまま聞いて、自分のやりたいことや、やりたい職業を我慢していたら、自分の人生を生きることができません

 親の言うとおりに決断しても、親が責任を取ってくれるわけではなく、いずれは自分で責任を取るしかなくなります。結局、人生の責任を自分で取るのなら、自分の生きたい人生を生きたほうがいいに決まっています。

 親のアドバイスで「正しいと思えない」「納得できない」というものは、とりあえず笑顔で「アドバイス、ありがとう」「いつも気遣ってくれてありがとう」と言い、心の中では「完全にスルーする」のがベストなのです

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
コロナ禍に22万部のベストセラーとなった著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)のほか、シリーズ80万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)など30冊以上の著書がある。