なぜプレーヤー意識が抜けないのか
ミドルマネジャーは、組織において最も人数の多い管理職であり、その仕事の巧拙が各部署のパフォーマンスを大きく左右する。もちろん全社に影響を与えるトップマネジメントも大事だが、良い会社ほど優れたミドルマネジャーも多いものだ。
彼らの典型的な仕事は以下のようなものである。
①部署(課)の仕事(役割)の定義
②部下のアサインメント(職務設計〈職務定義〉と業務配分)
③目標の設定と結果の必達
④部下の支援、指導とそれによる動機づけと人材育成
⑤効果的でハイアウトプットのチームを作る
⑥部署の代表として他部署や外部との関係を構築する
今回の事例では、A課長は②、④、⑤、⑥などにおいてあまり機能せず、自らがプレーヤーとして仕事を回しているようだ。このやり方は、短期的には良くても部下の能力開発の機会を削いでしまい、長い目で見るとマイナスになってしまう。
実はこうした「プレーヤー意識が抜けない」というケースは少なくない。その原因は以下のようなものだ。
・人間はそれまでに自分が結果を残してきた仕事に愛着を持ち、それを手放したくないと考える
・ミドルマネジャーとはいえ通常はプレイングマネジャーでもあるため、いつの間にか好きな「プレーヤー」の仕事に重点を移しがちになる。人間は、自分が結果を出しやすい仕事をやる方が、モチベーションが上がるという事情もある
・マネジメントの仕事とその価値をあまり理解できていない、または面白くないと感じてしまうという(現実に、マネジメントの仕事は楽しいことばかりではない)
これらに加え、人間というものへの関心の薄さや、面倒くさがり屋であるという個人の資質が重なると、「いつまでもプレーヤー意識の抜けないミドルマネジャー」が誕生してしまう。