なぜ、膨大な利益のほとんどを
配当と自己株式の買い入れに使っているのか?

 1.税引き後当期純利益(595億円)と利益剰余金(669億円)で、金額がほぼ同じなのはなぜ?
 9.配当と自己株式購入が多い理由は?

カノン このX社は、毎年の膨大な利益のほとんどを配当と自己株式の買い入れに使っています。利益剰余金が増えない理由はこのためです。では、なぜ積極的に配当と自己株式の購入をするのかというと、それは一株あたりの利益を高め、ROE(株主資本利益率)を引き上げるためです。つまり、株価を引き上げるためだと思います。

川村 株価を引き上げるために、稼いだ利益を目一杯、配当と自社株買いに使っているわけか!?

カノン そうよ。お父さんは私の答えに納得したの?

川村 そりゃ新聞くらい読んでいるからな。ソフトバンクが保有株式を売って、借金返済と自社株を買ったんだ。その目的が、株価の維持だそうだ。

林教授 そういうことです。川村さん。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。