衰退期や不景気のときほど、
意思決定力を上げるチャンス

 冒頭の質問者は、今の業務が顧客視点になっていないと感じているとのことでした。

 拙著『アーキテクト思考』でも詳しく解説していますが、組織は構造的にどんどん内向きになっていくものです。現場を活性化しようと新たな仕組みや制度を導入していくと、皮肉にも組織の老化はさらに加速します。

 では、この流れを止める方法はないのでしょうか?

 前述のとおり、ライフサイクルごとに求められるマネジメント手法は異なります。質問者の勤める大手金融機関では、モバイルバンキングや新たな決済手段などが登場したことにより、今大きな変革が求められているのではないかと推測します。

 そのような局面には市場に残るのか撤退するのか、ファクトに基づいたトップダウンでの意思決定、つまりは独裁的なマネジメントが求められます。

 経営は「矛盾のマネジメント」ともいわれますが、雇用を守りつつ、支店を閉鎖することは容易にはできません。このような難しい局面を乗り越えるためには、現場で起きている事実に目を配り、ロジカルに冷徹な意思決定をすることが必要です。

 そのような難局を乗り越えた経営者であれば、質問者があきらめずに現場の声を経営陣に届け続けることで、いずれ是非の判断をしてくれることでしょう。