2021年に携帯電話料金の値下げの激震に見舞われた通信業界。料金収入低下のダメージを受けながら、事業構造の再編を急いでいる。特集『総予測2022』の本稿では、孫正義氏の“懐刀”としてソフトバンクの技術戦略を支えてきた宮川潤一社長が「通信会社からの脱却」の戦略を語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二)
5G投資と“値下げ”で体力失う
「通信一本足打法」から脱却へ
――携帯電話料金の値下げに揺れた2021年。激動の中で社長に就任して2年目の22年の通信業界をどう展望しますか。
私はソフトバンクで(旧ボーダフォンを買収した2006年から)15年の間CTO(最高技術責任者)を務めてCEOになったので、その経験からいろいろなことを仕掛けていきます。
今までは(創業者の孫正義氏と前社長の宮内謙氏の下で)純粋にテクノロジーを追求してきましたが、企業トップとして収益のことを考えなければいけない。その私に突き付けられたのが携帯料金の値下げです。私の就任日(21年4月1日)に実施され、その影響がじわりと広がっています。
――携帯値下げの影響は、どんなところに出てくるのですか。
通信業界にとって最も深刻なのは、値下げがちょうど高速通信規格「5G」の切り替えのタイミングに重なったことです。もちろん携帯料金の値下げの議論はあってしかるべきなのですが、残念ながらタイミングが良くなかった。
海外の先進国の動きを見れば、大手キャリアが5Gの投資の加速を一斉に進めています。5Gは基地局の数だけでも4Gの3倍くらい造らなければならないので、本気でやるなら4G時代の投資金額よりもはるかに大きくなります。でも、日本では値下げの影響でキャリアの体力が失われています。
その一方で、もはや通信会社は「通信の一本足打法」では成長は見込めません。そこで、通信の資産をベースに、他の子会社も含めて業界のXaaS(Xアズ・ア・サービス)の世界観でデジタルサービスを生んでいく会社にしようと。この1年でポートフォリオの組み直しをやってきました。
――「通信一本足」から脱却を目指すソフトバンクはどんな姿になっていくのでしょうか。