「第4の通信事業者」の楽天グループの決算書を通信大手3社と比べると、体力勝負に敗れて大赤字に陥った実態が歴然だ。だが、楽天の三木谷浩史会長兼社長は強気の姿勢を崩さない。特集『決算書100本ノック! 2021夏』(全10回)の#5では、三木谷氏が積極姿勢を貫く根拠に迫った。その背景には、通信業界の雌雄を決する「競争軸」の激変がある。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
大赤字の楽天と高収益の大手3社
圧倒的な財務格差は歴然
「20~30%の(税引き前)利益をひねり出そうとしたら出せるが、将来は1兆円を実現したいので、今は売り上げ成長を目指している」――。
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、決算が“大赤字”に陥っても、決して弱みを見せることはない。
だが、NTTが完全子会社化したNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの通信大手3社との圧倒的な格差は歴然としている。
2021年3月期をみると、KDDIとソフトバンクの営業利益が過去最高。ドコモは2期連続で「通信3社で最下位」とされてはいるが、3社共に営業利益率は約20%の高水準。新型コロナウイルスの感染拡大の中でも、大手3社の圧倒的な財務の強さは健在だ。
翻って楽天の決算は悲惨と言える。20年4月に携帯電話事業に参入した楽天は、20年12月期が参入して初めての決算となった。その結果は、携帯事業の赤字が、インターネットサービスと金融の主力2事業の利益を食いつぶし、1142億円もの最終赤字を計上するありさまだ。
それでも、三木谷氏が強気の姿勢を貫くのは、通信業界の「競争軸」が激変していることと無縁ではない。
どういうことか。