固定観念が支配する世界では、
常に真逆の場所にビジネスチャンスがある

 日本史上でも、「逆転の発想」によって生まれた新しい潮流が、たびたび歴史を動かしてきました。

 その象徴的な例が、いわゆる「わび・さび」の文化です。

 室町時代から戦国時代にかけての社会は、秩序が乱れ、混乱が続いていました。当時の将軍や武将は、自らの力を誇示するため、貴族的で晴れやかな衣服を好んだといいます。足利義満による金閣は、その貴族性や華麗さの象徴のような建築です。

 しかしそれに対するカウンターカルチャーとして登場したのが、足利義政による銀閣でした。銀閣に象徴される東山文化は、絢爛豪華な北山文化とはまったく対照的で、幽玄で質実な世界を表していました。

 その後、一六世紀には茶人の千利休が、質素で内面の美を追求する「茶道」を生み出しました。これもまた、絢爛豪華な世界に対する逆転の発想でした。

 古い慣習や前例、固定観念が支配する世界においては、常に真逆の場所にビジネスチャンスがあります。時代のメインストリームを捉え、その真逆から発想してパンチを打っていくことで、大きな革新をもたらすことができます。

細尾真孝(Masataka Hosoo)
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞(イタリア)、iF Design Award 2021(ドイツ)、Red Dot Design Award 2021(ドイツ)受賞。9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。