新卒人数の増加で就職難が顕著に
「高学歴貧乏」になってしまう人も

 公務員は、中国語で「鉄飯碗」ともいう(「親方日の丸」に近い意味)。鉄の碗のように、一生安泰で失業する恐れがないということだ。実際、毎年0.05%の離職率であるというデータがある。よほど自ら過ちを犯さない限り、職を失うことはめったにない。

 また公務員の次に人気の就職先は、国有企業だ。「2021中国重点大学新卒就活状況報告」(国家重点大学とは国が認める権威のある大学、約100校しかない)によると、79%の学生が、国有企業での就職を望んでいる。

 そのほか、これまで若者の眼中になかった教員資格も昨年下半期における志願者は900万人以上に上っていることも明らかになった。若者が、「安全・安定・安泰」の職業を求めるようになってきた証しである。

 近年、中国では大学新卒の人数が年々増えてきて、就職難が顕著になってきている。

 中国教育部発表の統計によると、昨年の新卒者は909万人に達し、最高記録となった。今年は1000万人を突破すると予測されている。ちなみに、2000年には100万人だった。20年強で約10倍増えたことになる。

 これまでは景気が良くて、就職はそれほど難しくなかった。名門大学を出れば、国家機関や有名な大手企業に就職ができて、夢をかなえられた人も多かっただろう。ところが、ここ数年は経済成長にも陰りが出てきているため、雇用市場が大卒を吸収しきれなくなってきている。

 大学を出て気に入る仕事が見つからなかった場合、とりあえず大学院へ進学するという動きが活発になっている。大学院の受験者数は年々増えつつある。昨年末の中国教育部の発表によると、昨年の大学院の受験志願者数(発表時点)は457万人に達し、一昨年(2020年)より80万人増え、最多記録を更新した。

 中国では、この激しい社会競争を表す“内巻”(ネージェン)という言葉が、流行語となっている。「内巻」とは、学校、職場、社会生活などで、非理性的な競争が繰り返され激化するだけで、誰も勝者になれず、消耗してしまうことを意味する。

 大卒で希望の就職先が見つからず、修士課程の学歴を獲得しても、その価値は4年制の大卒と変わらない――そんなことも少なくない。最近、ちまたでは、「高学歴貧乏」「貨幣の価値(インフレが進んでいるため)と同じく下落しているのが学歴だ」と言われている。