「えっ? それは有休を取るときに、社員に申請書を提出させることですか?」
「いいえ。この書類を提出させること自体は社員の有休取得日数の管理に必要だと思うのでOKですが、問題は書類に記載する内容です」

<有休申請における対処方法の問題点>
○有休は労働者が当然に取得することができる権利であり、会社が許可を与えるものではない。
○労働者が有休を取得するにあたり、会社にその理由を伝える必要はないので、申請書に理由を書かなくてもよい。
○有休は、原則として労働者が申請した時季に与えるものとする。
○ただし、企業がその時期に有休を与えると、事業の正常な運営を妨げると判断した場合、日の変更を求めることができる(時季変更権)。
○しかし、時季変更権は、「労働者が申し出た日では有休の付与ができないが、代替えの日であれば付与できる」という付与日の変更を前提としたものであるため、例えば「人手不足が解消したら有休を認める」など、具体的な付与日の変更ができなければ、時季を指定したとはいえない。

「これまでの説明からすると、B君をクビにはできないということですね?」
「はい。それどころか有休の取得を拒否したということで、労働基準法違反になる可能性があります」
「分かりました。B君には明日から普段通りに出社してもらいます。給料の計算はB君の不利益にならないようにします」

そして、C社長は続けて質問した。

「もしウチの社員が無断欠勤をした場合、会社としてはどのように対処したらいいですか?」

<社員が無断欠勤した場合の対処方法>
(1)電話やメールなどで社員と連絡を取り、出勤できない理由を尋ねる。その上で、出勤可能な状態であると会社が判断した場合には出勤するように促す。
(2)上記での連絡が取れない場合、または応じない場合は社員の自宅に赴き事情を聴く。
(3)社員が会社に出勤する意思がない場合は、郵送、メールなどで退職届を提出するように促す(退職届の提出期限はあらかじめ決めておくこと)。1回で応じない場合は、2、3回繰り返し提出を促す。
(4)(3)を行ったにもかかわらず、長期にわたり退職届の提出がないまま無断欠勤をしている場合には即時解雇扱いにするか(ただし労働基準監督署に申請し、認定が必要)、または解雇通知書を配達証明付き内容証明で郵送する。
(5)社員が行方不明等で連絡が取れない場合は、裁判所に申し立て公示送達の手続きを取る(公示送達とは、この場合地方自治体の掲示板や官報で解雇を通知してもらえる制度のこと)。実際に公示されてから2週間以上経過すれば即時解雇が可能になる。