思いつきの案にすがる上司は
愚の骨頂

 上司が部下に解決策を相談する場面を考えてみましょう。上司は部下を集めて「売上を上げるために何か画期的なアイデアはないか」と問いかけます。部下たちはしばらく、じっと下を向いて、嵐が過ぎ去るのを待っています。

 やがて上司は沈黙状態にしびれをきらします。部下を1人ずつ指名して、アイデアを強制して出させます。「こういうのはどうでしょうか。あまり自信がないのですが」と部下は渋々答えます。上司はすかさず「素晴らしい! 君はそれに詳しそうだから、君が担当者だ。明日までにレポートをまとめてみんなの前で発表してくれ。よろしく!」とすがります。

 部下にとっては、恐れていたことが現実になりました。しかし部下が提案したアイデアや対策は、満足のいくものではありませんでした。たまたま出された案にわらをもすがる気持ちでしがみついても、投資対効果の面で期待できません。

 より広い可能性の中から解決策を見出すためには、「発散―収束」のワンセットが必要です。発散でアイデア収集、収束で投資対効果を考えて優先順位をつけます。

収束では集めた材料を
重要度で絞り込む

「発散―収束」の前後のプロセス(手順)を整理してみましょう。基本プロセスは、「テーマの明確化―発散―収束―テーマのまとめ」です。テーマの明確化では、目的や範囲を確認します。発散では、情報収集、アイデアの収集、解決策候補の抽出を行います。あとで説明するブレーンストーミングは、発散のための代表的な手法です。